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どうやら……すっかり忘れているのか、まるっきり他人事だと気にしていなかったか、両方か……
恐らく両方なのだろう。
ずっと言われ続けている事を何故、綺麗さっぱり忘れられるのか。
自分から首閉めに行って……文句は自分に言おう。
何よりいい加減観念しないと。
スタッフ一同、待ってるんだから。
あなたがカラーズに上がるのを。
「で、どうしたの？」
「仕方ないじゃん。
それしか空かないって言うんだもん」
「観念したんだ」
優しいね……
あんなにのらりくらり躱して来たのに拾った他人の為に受けるんだ。
「じゃ、俺も頑張るよ。
智がいるなら俺もカラーズに上がるから」
「えっ……」
「智がいるならやるよ。
頑張れる」
どさくさに紛れて抱き締める。
「俺が智と並びたいだけだから」
「雅紀……」
抱き締め返してくれた。
役得？
……余計、頑張れる！
２人で力一杯抱き締め合った。
「１年、待っててね」
「……待てない。
２ヶ月で韓国語、フランス語マスターよろしく。
出来そうならポルトガル語覚えるといいかも」
「ちょっちょっと待って！
２ヶ月だよ、そんなに無理だから」
「俺と頑張るって言ったじゃん」
なんで急にそんな事を言い出す？
「もう１人誰か上げろって。
だったら俺、雅紀がいい……って言って来た」
言って来た！？
何故本人の承諾もなく？
心の準備って知ってる？
「手伝ってね」
「……俺、教育係」
「誰の？」
「潤の……
部屋空くまで俺の部屋に置いて、その間に教育しとけって」
だから無理って言いたいの？
「剛さんに頼んで来たから韓国語は。
フランス語なら相手出来る」
根回し済み？
カラーズ直々に？
有難いやら迷惑やら……
頑張ります。
……としか、もう言えないようだ。
「冬休みにお引っ越し。
それまで現状でって」
「らじゃー」
力なく返事をする。
完全決定事項なのだと思い知る。
「潤、ほったらかしだろ。
戻ってやったら？」
「そうだな。
じゃ、雅紀、頑張ろうな」
こんな時だけ無駄に爽やかな笑顔を向けて、颯爽と帰って行った。
「鬼……」
ドアが閉まってから呟く自分に溜め息。
１人になって……恐ろしい程の疲労を感じた。
一方、部屋に戻った智。
手持ち無沙汰でソファーに座る潤に声を掛ける。
「ただいま。
なんか飲む？」
「じゃ、水」
「水？
コーヒーとかじゃなくて？」
「ああ。
出来れば常温」
「………」
どういう拘りだろう。
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作者名：蒼羽
| 作成日時：2020年2月10日 8時
