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季節は移ろい日射しに痛みを感じるようになってきた。
だか2〜3日前から降り続ける雨はこの日、朝からバケツをひっくり返したような豪雨と暴風が吹き荒れていた。
所謂、台風だ。
「凄いね」
「何が凄いってこの台風の中、暴風警報出てんのに来る客だな」
キャンセルも出たが出てない客もいる。
となると営業しない訳にはいかなかった。
「キャンセルも出てるから、それをいいことに延長する客、絶対いるぞ」
普段なら1時間毎の予定がびっしりと詰まっている。
客が延長したいと言っても席に空きがないか、あってもナイトによってはチェンジしてしまう。
特にカラーズの場合は言語の都合もあり空いている事はまずない。
なのでこういう場合、延長出来るならと延長する客は多い。
「ニノがさ、翔ちゃんもキャンセルしてないって笑ってたよ」
「そうなの?
暇だな……って今日みたいな日は仕事になんないか」
「だろうね。
物流も止まってるしね」
あれから会う度に地味に席を詰めると言う手で寄って来た櫻井は、回りから攻め始めた。
雅紀が一緒なら雅紀に、ニノと一緒ならニノに、潤と一緒なら潤に話し掛けた。
因みにナイトの指名はニノだ。
頭脳戦を得意とし話術の駆け引きを楽しめる2人はそれを楽しんだ。
特例の事を話すと真っ先に雅紀が落ちた。
その日のうちに翔ちゃん、雅紀と呼び会う事になり、何故か肩を組んで大笑い。
結構ノリのいい人間だと認識された。
次にニノと潤が落ちた。
起業した会社を大きくし、この店に出入り出来るまでにしたその手腕は勿論、巧みな話術。
ニノは店では店の会話、プライベートはプライベートの会話の使い分けを気に入ったようだ。
潤もまたしかり……
自分たちとの話だけでなく感性で動き会話する雅紀についていける翔の引き出しの多さと懐の広さに感嘆した。
そんな風に落ちていく3人を智はふわふわと笑って見ていた。
「でもニノちゃん、今日は席に付けないって言ってたよ。
先に他の予約入ってたから。
まあ翔ちゃんはどのナイトでも大丈夫だけどね」
すっかり翔贔屓である。
見た感じは懐いているの方がしっくりするか……
「雅紀、翔くん大好きだよね」
智もすっかり巻き込まれた。
智以外の誰かと話していても必ず智にも話を振ってくる。
そうして話に巻き込まれ気がつくと普通に話をするようになっていた。
そして智はそれを嫌だとは感じていなかった。
「さあ開店だよ、雅紀」
「了解!」
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作者名:蒼羽 | 作成日時:2020年2月10日 8時