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「まだ中身は子どもなんですよ。
特に今は思春期の反抗期真っ最中。
でも優しい子です。
反抗期な癖に拾ってしまった他人の為にやりたくもないクイーンになりました」
「………」
「あの子の本当の名前も年齢もわかりません。
本人もわかってないので。
年齢は医者の見立てです。
それだって栄養状態の悪さを考えればもう少し上かもしれない。
ゴミ箱を漁って食べ物や衣類を調達して飢えや寒さを凌いでいたそうです。
人に見つからないようにひっそりと……」
「何故……彼は助けを求めなかったのですか？」
「怒鳴られ追いかけ回されて怖かったそうです。
何より助けを求める言葉を知らなかった……」
親に大切に育てられ、友達と馬鹿やって怒られた事もあった。
それは愛情であり、躾だった。
愛情を知らない子どもにそんな事はわからない。
ただ怖い思いをしただけ。
そうなれば助けを求めるどころか避けてしまう。
結果、大怪我をして倒れるまで保護される事はなかった。
「10歳にも満たない子どもがここに来て漸く人間として生きる事になったんです。
そこからの成長です。
だから丁度思春期の反抗期なんですよ」
重い話なのにそう聞こえないのは、話すオーナーの独特な柔らかな口調のせいか。
それ以上に保護者としての愛情を感じるからかもしれない。
「ここのナイトたちの何人かは何かしら傷があってここに来ます。
ここで自分の生きる道を見つけて巣立って行くんですよ……
あの子はまだ巣立ちの時ではないと考えます」
……！？
ならば何故引き合わせたのか？
確かに思い立ったらそれを物にするまで努力する事を惜しまない。
だから何度も話をして、ここへも何度も足を運んだ。
昼に夜に……
漸く話が出来たと言うのに智を怒らせた上に、今頃になって巣立たせない？
意味がわからない。
「特例です。
本来、ナイトと客が外で出会っても他人です。
声は決して掛けませんし、掛けられても無視するようにと決まっています。
夢物語とくっく、アルト……のどこかで食事をします。
その後、シェルとりぼーん……このどちらかで飲んでいます」
「……？」
店で会った後からでは知り合いになる事はない。
規則でそうなっている筈だ。
なのに行き先を教えるなんてどういう事なんだろうか？
「あなたの言った事は私も思っていました。
色んな世界を見て欲しいと……
ですが、私では何一つ変えられない。
私はあの子を守ってしまうから。
だから……」
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作者名：蒼羽
| 作成日時：2020年2月10日 8時
