24 ページ24
「それはそうだけど、なんでそんなに年末年始長いの？」
「客が来ない。
年末年始は家族や会社でパーティーするから。
それにこっちも入れ替えするから苦情はない」
正確にはクリスマス、年越しなど家族で過ごす習慣のある国も多く、忘年会や新年会、挨拶回りなど何かと付き合いもあり客が来ないのである。
店としても長期休みに人事異動とそれに伴う部屋移動や店内のメンテナンスを行う。
「後、リフレッシュと勉強の為に毎年、海外旅行と温泉の行きたい方に行く」
所謂、社員旅行だ。
海外も温泉地も毎年違う場所に行く。
どっちへ行くかも自由。
それ以外は長い休み、それぞれに過ごす。
「それから……
これね、潤のご両親とお姉さんの居場所」
「えっ……どうして？」
「ごめん、言い忘れてた。
会員もだけどスタッフも入る時に徹底的に調べるんだ。
嘘つく奴もいて後から問題になっても困るから。
それで潤の事も調べた。
その時の……これ」
もう１つの封筒を差し出しながら語尾が小さくなる。
「俺は中は知らない。
知ってるのはオーナーとマネージャーとか幹部だけだから。
詳しく聞きたいならオーナーに聞くといい」
しゅんと下を向いてしまう。
調べると言う事を言い忘れ、結果勝手に調べた事になってしまって申し訳なく思った。
「ありがとう」
「へっ……」
言われた言葉にビックリして顔を上げる。
調べられる事を嫌がる人間もいた。
でも礼を言われたのは初めてだった。
「父さんたちの事、気になっていたんだ。
でも今の俺じゃ探す手立てもなかったから……
だから、ありがとう」
素直にありがとうを言える潤をぽやんと見つめる。
「ううん……
俺が調べたんじゃないよ」
「わかってるけどさ。
まぁ色々？
助けて貰ったし世話にもなってるし。
全部まとめてかな……」
穏やかな優しい微笑みだった。
智はぽやんがぽやややぁ〜んになる。
「どうしたの？」
「えっ、あぁ……ごめん」
「何がごめんなの？」
「なんだろ？」
「なんだよ、それ」
２人で顔を見合わせて吹き出してしまった。
散々笑って漸く落ち着くと潤は智に
「あんた、変わってんな」
「らしいね。
よく言われる。
人として足りないもんだらけだからかな」
「足りないものって？」
「わかんない。
オーナーに拾われるまで１人だったから……
誰も何も教えてもらってないんだ」
「……！！
……１人って？」
「１人で死にかけてた」
衝撃の告白だった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 156人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：蒼羽
| 作成日時：2020年2月10日 8時
