19 ページ19
日本人ではないのか？
「多分、日本人」
多分……？
「父親知らないって言ってたし、母親も殆ど覚えてないって言ってたな」
両親を覚えてない……
「だからどっちかが外国人かもしれない」
……結構衝撃的な話だが、他人が笑いながら話していいんだろうか？
気にするような人ではなさそうだけど……
「智は隠してないから。
聞けば話してくれるよ。
聞くとね、衝撃的過ぎて自分が哀しみの中に籠ってるのが申し訳ないような気がして立ち直れる」
「なんか自分だけ不幸だって思えなくなる」
「でさ、あいついつも笑ってんの。
だから、つられて笑っちゃうんだよ、皆」
誰よりも不幸なのか？
それを気にしていない？
どういう事なのか聞こうと思ったか控え室には誰もいなくなっていた。
下を見ると、もうそれぞれに席についていた。
世界中に金持ちは山程いる。
そんな彼らがステイタスとして、この店に訪れ癒しの時間を過ごして行く。
桁違いの金額を払うに値するから。
その為にナイトたちは努力を惜しまない。
ナイトたちを見ていると婦人たちの手を取り、ホールに出ていた。
そして……
踊り出した。
……ナイトの必須事項にあったワルツだ。
日に一度２曲だけだが、ワルツの時間がある。
………何か違う……のが混じっていた。
若干名、殿方が踊っている。
ナイトと……
ナイトが女性側となり客の男性と踊っている。
その中で………クイーンのワルツが……上手い。
女性らしい柔らかさはないがキレがあり、何より綺麗だ。
正に女王……
そしてもう１人……
一度見てしまったら目が離せなくなった。
智だ。
相手の男性に全てを預け任せているように見える。
だが男性の動きが少しぎこちなく、相手をリード出来ているとは思えない。
智の方がそれを周りに気付かれないように男性を上手くリードしているのだ。
男でありながら柔らかく流れるようなダンス。
クイーンとはまた違う美しさ。
相手を引き立てる為のダンスだ。
２曲はあっと言う間に終わってしまった。
これが必須事項なのか？
婦人相手に踊っていたナイトとて婦人の全てが上手い訳ではない。
足を踏まれても笑顔でエスコートする。
……必須はかなりのレベルだった。
脱力してソファーに全身を預ける。
色んな事が有りすぎた。
完全にキャパオーバーだ。
もう何も考えられない。
頭がくらくらするし、ずきずきもしてきた。
目の前が暗くなっていく。
潤はブラックアウトした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 156人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：蒼羽
| 作成日時：2020年2月10日 8時
