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それから潤は１年かけて俺から恐怖を拭い去ってくれた。
と同時に俺にとって潤は掛け替えのない人となるのは必然だった。
そして……潤に上書きされる事を望み、潤は答えてくれた。
それは高校時代の櫻井くんと相葉くんとの苦い思い出すら書き換えてくれたんだ。
だけど………そんな甘い時間は長くは続かなかった。
就活が始まるとどうしても擦れ違いの生活となる。
同じデザイン科でもグラフィックと環境ではやはり職種が変わってくる。
人当たりがよい潤は早々に内定を貰い就職先も決定してしまった。
俺は男の人相手に恐怖は完全には消えず、ただでさえ話す事が苦手だったのに言いたい事の半分も言えないまま終わる事も多かった。
そんなので受かる訳もなく。
面接を幾つ繰り返しても慣れるどころか緊張は増して行き、なかなか決まらない。
面接で疲れて帰って来ると、どうしても潤の相手をする気力もなくなる。
そんな日々が続くと潤は学生生活最後だと遊びに出だした。
就職の決まらない俺にはそれを止める権利も術もなくただ暗い部屋に１人帰るだけ。
そのうちに潤はアルコールの匂いとは違う甘い香りを纏って帰るようになった。
でも俺はそれに対して問い詰める事もできない。
就職も決まらず対等には…なれていないから。
大学生活が終われば落ち着くだろうと自分自身に言い聞かせていた。
明け方に帰って来て覚えのない匂いを纏う潤に抱き締められると胸がぎゅっと締め付けられた。
それでも………その腕を振り解けなかった。
漸くどうにか内定を貰った時………その喜びを分かち合いたい人は、その日も帰って来なかった。
携帯に送ったメッセージに既読すら付かない。
眠れぬまま夜は過ぎて行った。
重い体を引き摺るように大学へ向かった。
それでも就職が決まった事の安堵からか久々に顔を上げて歩けた。
決まらない間はずっと俯いていたようだ。
顔を上げて前を見ると……見知らぬグラマラスな美女と腕を組み、その肩に美女の頭を乗せて歩く恋人な筈のその人がいた。
そして………それだけではなかった。
彼は男女問わずモテるのだと改めて思い知らされた。
日毎、誰かが潤の隣にいる。
俺でない誰かが……
それでも……俺の所に帰って来るからと信じ縋るしかなかった。
擦れ違ったまま……内定の報告もできないまま……
卒業は間近に迫っていた。
卒業式当日も……友達と打ち上げに行く潤を見送り、そのまま家を出た。
結局……何も言えなかった。
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蒼羽(プロフ) - 青子さん» 初めまして＆コメントありがとうございます！…もう嬉しすぎます。青子さんのお話もお気に入り入れて何度も読み返させて頂いてます。そんな方からのコメント嬉しすぎます。拙いお話にお付き合いありがとうございます。しかもタニス・リーファンだなんて…頑張れます！ (2021年11月26日 22時) (
レス) id: f9ecf164e6 (このIDを非表示/違反報告)
青子(プロフ) - 今回のラスト、まさかまさかでした。この先があったら、なかなか怖い事になりそう…などと妄想しております。蒼羽さんの作品をこれからも楽しみにしております。モンスターの太郎ちゃん、一郎君兄弟、楽しみにしております。最後にタニス・リーのファンです。 (2021年11月26日 16時) (レス) id: d98076db62 (このIDを非表示/違反報告)
青子(プロフ) - はじめてコメントさせていただきます。蒼羽さんのお話は全部読ませていただいております。毎日の更新本当にありがとうございます。 (2021年11月26日 15時) (レス) id: d98076db62 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：蒼羽
| 作成日時：2020年11月26日 0時
