傷ついた夢は昨日の彼方へ ページ18
「何、描いてんの？」
キャンバスの前で迷いなく筆を動かす人に尋ねた。
「モナリザ、リベンジ」
「……どういう事？」
「YouTube見てたら懐かしいのあって。
それでおっさんなモナリザ見たからリベンジ。
この前、本物見ただろ？
これはリベンジしろって事だなって思ったんだ」
時々発動する謎な閃き。
懐かしいおっさんなモナリザって………お絵描き神経衰弱か？
それをYouTubeで見た訳ね。
で、数週間前に本物も確かに見に行ったよな。
丸１日ルーブル美術館で過ごしたあの日。
モナリザの前から３０分動かなかったね、あなた。
あの魅惑の瞳を見つめながら右から左から、じっと見つめてた。
俺の事だってそんなに見つめた事なんてないのに。
ちょっと焼けたけど……何時もと違う真剣さを漂わすあなたの眼差しが珍しく、俺はその３０分あなたを見てた……………のは内緒だ。
……これは…今日は動かないな。
こうなったこの人の集中力は半端なく、時間どころか数日とかのレベルになる。
究極の放置プレイだよ。
それも承知の上で付き合ってんだから仕方ない。
キッチンに行って１口サイズのミニおにぎりとだし巻き……勿論１口サイズに切って、スティック野菜をワンプレートにする。
そのプレートを彼の目の前に差し出す。
視界に入ったのを確認して
「置いとくから食べなよ。
俺は買い物行くから。
その間にこれ食べてなかったら強制終了で休憩入れるからね」
と声をかける。
彼は筆を止め俺をちらりと見て
「……あい」
ペットボトルのドリンクともどもテーブルの上に置いておく。
それから
「じゃあ、行ってくる」
しっかり彼の唇を堪能して出掛ける。
「行ってらっしゃい！」
こっちも見ずにぶっきらぼうに言うのは寂しい気もするが耳が赤いからそれはそれ良しとする。
こういうの恥ずかしがるよね。
どうせ時間を忘れて集中するだろうから、のんびり買い物をする。
もう秋物の服も出てるし見に行くか。
ついでにあの人のも見ておこう。
寧ろそっちの方が楽しい。
何件か行き付けの店で新作の秋物を見て数点買った。
その帰りにスーパーも寄る。
今日の夕食は何にするか。
まだまだ暑いしな。
さっぱりしたのモノにするか。
敢えてがっつりにするか。
……何かに集中し出すと食べる事が疎かになるあの人の事を考えると………がっつり食わしとくか。
すき焼きにしてやろう。
高過ぎず安過ぎず柔らかいけど脂身は少なめな肉と野菜を買って帰る。
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蒼羽(プロフ) - 青子さん» 初めまして＆コメントありがとうございます！…もう嬉しすぎます。青子さんのお話もお気に入り入れて何度も読み返させて頂いてます。そんな方からのコメント嬉しすぎます。拙いお話にお付き合いありがとうございます。しかもタニス・リーファンだなんて…頑張れます！ (2021年11月26日 22時) (
レス) id: f9ecf164e6 (このIDを非表示/違反報告)
青子(プロフ) - 今回のラスト、まさかまさかでした。この先があったら、なかなか怖い事になりそう…などと妄想しております。蒼羽さんの作品をこれからも楽しみにしております。モンスターの太郎ちゃん、一郎君兄弟、楽しみにしております。最後にタニス・リーのファンです。 (2021年11月26日 16時) (レス) id: d98076db62 (このIDを非表示/違反報告)
青子(プロフ) - はじめてコメントさせていただきます。蒼羽さんのお話は全部読ませていただいております。毎日の更新本当にありがとうございます。 (2021年11月26日 15時) (レス) id: d98076db62 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：蒼羽
| 作成日時：2020年11月26日 0時
