誰も幸せにならないこの恋は ページ47
そのまま増渕くんの病室に入る気にはなれなくてそのまま市橋くんの元へと向かった。
『市橋くんこんばんは』
「ああ」
こうやって学校帰りにそのまま市橋くんの所に来るのが日課になった。
その日にあった出来事を勝手に話したりしているけど、市橋くんは意外にもきちんと話を聞いてくれる。
「…無理すんなよ」
『え？』
「お前だってしたいことくらいあんだろ。だから無理して来なくて、」
『私は今、したいことしてるつもり』
「は？」
『市橋くんのそばにいたいから、ここにいるの』
市橋くんの荷物を片付けながらそう呟くと、私たちの間を沈黙が包んだ。
何も言わない市橋くんに不思議を感じて『どうかした？』と振り向いた瞬間、ぎゅっと強く抱きしめられた。
────思わず、息が止まる。
『っい、ちはし、くん』
「…好き」
『っ、あ、え…』
( 市橋くんの耳、赤くなってる )
「ぜってぇまたお前の隣、歩けるようになるから」
『…っ、』
「そしたら俺と、」
胸がドキドキと、うるさい。
それでも市橋くんの声は鮮明に耳の奥に届く。
「────付き合って欲しい」
返事をしなきゃ、なにか答えなきゃいけない。
なのに頭はいくら考えても真っ白なままで。
そんな私の心を無視するように抱き締められる腕は更に強くなる。
そんな私に、神様はいつも────意地悪だ。
「おーい市橋ー遊び行こうぜ、って…」
ガタンと松葉杖が目の前に倒れた。
入り口には増渕くんが私たちを見て大きく目を見開いている。
もし神様がどこかにいるなら、こんな偶然はかき消してくれたんだろうか。
────誰も幸せにならないこの恋は、跡形もなく無くなってくれたんだろうか。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 807人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
狛犬のリサ(プロフ) - あーあ、やっぱり夢主はトビオじゃなくて市橋かぁ…けっ…作者は最高でドラマも最高だったし…トビオ落ちだったらもっともーっと最高だったのになぁ (2019年1月22日 2時) (
レス) id: 3d96b1b6a9 (このIDを非表示/違反報告)
みい - いつも楽しみにしてます！トビオおち分岐ありがとうございます！トビオと結ばれて欲しいと思ってたので嬉しいです (2017年9月27日 16時) (レス) id: 788e2e4591 (このIDを非表示/違反報告)
はる坊(プロフ) - この前はトビオオチが見たい！とコメントさせていただきましたが、正直私もどっちも見たいです。どちらも書いてくださるというお話すごく嬉しいです！！頑張ってください！！ (2017年9月2日 22時) (レス) id: 0e6de27daf (このIDを非表示/違反報告)
前田ちかね(プロフ) - 市橋くんオチがいいです！ (2017年9月2日 22時) (レス) id: f96c4eb485 (このIDを非表示/違反報告)
emu(プロフ) - 今日の回は昼顔っぽくて面白かったです！めっちゃ好きですこの感じの＞ω＜ (2017年9月2日 1時) (レス) id: 7e03b267ff (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：佐伯
| 作成日時：2017年8月8日 18時
