市橋くんとの昔ばなし、と、キス ページ32
「…、え？」
ゆっくりと市橋くんの顔が近付く。
その度にドクン、ドクンと胸が大きく波打った。
ゆっくりと唇に優しく触れる感覚。
ぼやけてしまっているけど、閉じられた市橋くんの瞳に思わず見とれてしまった。
触れた唇がそっと離れる。
でも少し動けばまた触れてしまいそうなその距離に、恥ずかしくなってしまう。
「…今度は、邪魔されなかった」
『へ、な、っ何、言って…』
「何だよ聞きたいことって」
『…何で、私なんですか？』
市橋くんに告白されてからずっと考えていたけど、結局分からないままだった。
市橋くんと関わったこともなかったのに。
「……入学したばっかの時」
『へ？』
「初めてお前に会った」
『…私に、ですか？』
思い当たる節が、全くない。
必死に記憶の糸を手繰り寄せてみるけれど、思い出せそうな気もしない。
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
「矢波高のてっぺん取るために色んな奴とやり合った」
てっぺんを取ることしか眼中になかった俺は毎日毎日、手当り次第に喧嘩ばかりだった。
そんな俺に反感を持つ奴もそれなりにいて、そんな奴らが集まって俺に喧嘩を売ってきた。
これに勝てば、確実に俺の名前は上がるだろう。
そんな欲に目が眩んでその喧嘩を買ってしまった。
案の定、俺に一人で数え切れないほどの群衆に勝てるわけもなかった。
傷だらけのボロボロの体で人目につかない道端で座り込んでいた。
「その時だ、お前が現れたのは」
俺の顔を見て怯えたような顔をして一度は俺の前を通り過ぎて行った。
でもいきなりピタッと体を止めて、また俺の元に恐る恐る近付いて来る。
…凡下高のやつか。
『…あ、あの、大丈夫です、か』
「…ああ？」
『け、怪我、してる』
『あ、ちょっと待ってくださいね！』そう言って持っていた鞄の中を漁り出す。
何だよこの変な奴、うぜえな。
それが一番に感じたことで。
『あった！』嬉しそうな顔で何かを差し出してくる。
よく見てみるとたった一枚の絆創膏で。
『これ、使ってください』
「…要らねえよ、んなもん」
『ちゃんと手当しないと』
「うっせえよ」
たかが絆創膏一枚だけ渡しといて手当なんて、何言ってんだよこいつ。
そう思って無視していると無理やり俺の手を掴んで手のひらに絆創膏を置くと『じゃあちゃんと治して下さいね』そう言って走り去っていった。
「おい！」
そんな俺の声も届かないまま。
手のひらに乗った一枚の絆創膏をただ見つめつ続けた。
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狛犬のリサ(プロフ) - あーあ、やっぱり夢主はトビオじゃなくて市橋かぁ…けっ…作者は最高でドラマも最高だったし…トビオ落ちだったらもっともーっと最高だったのになぁ (2019年1月22日 2時) (
レス) id: 3d96b1b6a9 (このIDを非表示/違反報告)
みい - いつも楽しみにしてます！トビオおち分岐ありがとうございます！トビオと結ばれて欲しいと思ってたので嬉しいです (2017年9月27日 16時) (レス) id: 788e2e4591 (このIDを非表示/違反報告)
はる坊(プロフ) - この前はトビオオチが見たい！とコメントさせていただきましたが、正直私もどっちも見たいです。どちらも書いてくださるというお話すごく嬉しいです！！頑張ってください！！ (2017年9月2日 22時) (レス) id: 0e6de27daf (このIDを非表示/違反報告)
前田ちかね(プロフ) - 市橋くんオチがいいです！ (2017年9月2日 22時) (レス) id: f96c4eb485 (このIDを非表示/違反報告)
emu(プロフ) - 今日の回は昼顔っぽくて面白かったです！めっちゃ好きですこの感じの＞ω＜ (2017年9月2日 1時) (レス) id: 7e03b267ff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：佐伯
| 作成日時：2017年8月8日 18時
