俺がいる。【伏黒恵】2 (ページ6)

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56話ページ6

『…あの』

伏「ん」

『手を繋ぐ必要ある…？』

伏「迷子になったばかりの分際で何でそう思う」

『…うっ』

2人は今あの時と同じ様に、指を絡めて手を繋いでいる。少し怒気を含んだ言い方で正論を言われれば、Aは反論できない。でも反論できないのはそれだけが理由では無い。繋いでいる手を見ると、動悸がして何故か言葉が出てこないのだ。

伏「なぁ具合悪いのか？顔も赤い気がするけど…」

口数が少ないAを心配し、ズイッと顔を近づける伏黒。

『きききき気のせいだよ！！』

すぐさま伏黒の顔から距離を取って答えるAは、あまりに不自然。伏黒もその不自然は察知しているが特に深入りせず、虎杖と釘崎がいる場所へ足を進めていった。

釘「あ、A！こっちよ！こっち」

虎「おーい」

お店の近くに着いた頃、外で待つ2人に会った。そして繋いでいた手をバッと離すA。

『ご、ごめんね皆。てか何で外に！？』

釘「混んできちゃって、うちらは食べ終わってたから居座るの気まずくてさ」

虎「龍ヶ崎の食べかけは俺が食べておいた！腹減ってんなら後でなんか奢る！」

伏「何でオマエが食べかけ食ってんだ」

虎杖の発言を聞き逃さなかった伏黒。虎杖は焦ったと言わんばかりに冷や汗をかき、釘崎に助けを求める。

釘「じゃあ、ナイクの限定スニーカーでどお？」

虎「乗った！」

釘「伏黒、これで虎杖を許してやって」

そう言い伏黒の携帯が鳴る。
見れば釘崎から1件の通知。中身はAが校庭で気持ちよさそうに昼寝している時の寝顔だった。

伏「……いいだろう」

『なんかとても良からぬ取引が行われている気がするんだけど…』

釘虎伏「「「気のせいだろ」」」

こうしてAは無事合流でき、まだ乗ってないアトラクションへ向かった。

『野薔薇、手貸して』

釘「？はい」

突然のAのお願いに応える釘崎。手を差し出せば指を絡め手を繋いで来た。

釘「な、何！？」

『うーん…ならない…』

Aは試していた。伏黒と手を繋いだ時に起きた動悸は釘崎と手を繋いだ時でも起きるのか。

釘「ちょっといつまで繋いでるのよ。そんなに怖いなら伏黒と繋げば？さっき繋いでたんだから」

『み、見てたの！？』

ニヤりと言ってきた釘崎。でもよくよく考えれば、また迷わない為に手を繋がれてたのに何で隠そうとしたのか自分で自分が不思議だ。

虎「俺らも手繋ぐか？」

伏「…」

虎「無視だけはすな」