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『片方だけ付けていると、私の性的嗜好が疑われてしまうので、もう片方のピアスが欲しいです』
「下さい」と言って俺の方へ手を開く。その時映画館の自動ドアが開いて、冷たい北風が吹いた。それはAの髪をなびかせ、片方の耳についているピアスを揺らしてしまう。
ポケットに手を突っ込めば、家を出るときに鍵と一緒に持ってきていたピアスが指先に小さく刺さった。
俺はAの手に乗せず、その手を引っ張っては勢い良く引き寄せる。そして再び抱きしめ、腰に回していない方の手で彼女の耳にピアスを通す。
ゆっくりと離れても、その振動がピアスに伝わって、ゆらりと揺れた。彼女はピアスを触り、満足気に俺を見て頷く。
『これでもう、欲しいものは手に入りました』
……なら俺は要らないのか、そう聞きたくても聞けず、先を歩いていくAをただ見つめる。しかし不意に振り向いた彼女は、俺に向けて手を差し出した。
『寒いので、どこか暖かいところへ入りましょう』
そう言われてもなかなか握れずにいる俺に、浅い息を吐いたAは、俺の手を強く握る。
『だってもう、総悟さんは私のモノらしいので……』
『持ってるものを欲しがったって、仕方がないでしょう?』
悪戯っ子のようにクスクスと笑い、俺の手を引いた。その彼女の手を握り返せば、幸せそうに目を細める。
外に出ると「寒いですね」と言っては白い息を吐く。温めるようにコートのポケットの中へ彼女と繋いでいる手を入れて寄り添うと、今度は「暖かいですね」と微笑んだ。
『好きです』
前触れもなく突然そう言って俺の方を見上げる。やはりなかなか思うように素直には口から出ず、燻っていれば、またもや頬を膨らませた。
そんなAの尖らせた唇にキスを落とすが、誤魔化すなと睨まれてしまう。
『……すんげー、好き』
熱くなった顔を隠すために首筋に手を置き、意味もなく首を回す。Aは笑って、俺の腕に絡みついた。
本当に俺は、Aじゃないと駄目みたいだ。
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美空 - 完結おめでとうございます!とても素敵な作品でした!これからも楽しみにしてます! (2017年8月29日 2時) (レス) id: 611dba761a (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - ジュリさん» 最高ですか!! ありがとうございます! とっても嬉しいです! あんまりイチャコラを書かなかった作品ですが、ジュリさんがそう言ってくださったのなら良いです! 閲覧とコメントありがとうございました (2017年8月19日 11時) (レス) id: 677c22d7bd (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - ナナさん» ありがとうございます! 淡々とした夏休みの小さな暇潰しにでもなってくださったら嬉しいです( ´ ∀`) 新作の沖田は甘々ですが、こちらでは書かなかった甘い沖田を書いているので閲覧よろしくお願いします!! (2017年8月19日 11時) (レス) id: 677c22d7bd (このIDを非表示/違反報告)
ジュリ - あぁ最高です! (2017年8月18日 13時) (レス) id: 84c51744c8 (このIDを非表示/違反報告)
ナナ(プロフ) - 凄く良かったです!夢中で読みました!新作も読ませていただきます!!! (2017年8月17日 23時) (レス) id: 12c1829223 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ハル | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/harumemory
作成日時:2017年7月25日 11時