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439. ページ17

アルバムは捨ててあったって言ってたな
指輪は捨ててなかったはず


薬の缶も
中身だけ捨てられてたんよな


質問に対する答えは知ってるけど
言えるわけない





「そこまで聞いてへんな

 無意識でやった事やから
 あんまり気にすんな」

「でも…」

「捨てたかどうかもわからんやん?
 単に家に帰ろうとしただけかもしらんで
 
 だから、気にすんな」





記憶にない事なんか気にせんでええ

忘れて正解

一生思い出さなくていい

そんな気持ちで頭を撫でると





「じゅんたくんて…
 いいパパになりそうだよね」
なんて突然俺の目を見て言い出した


「何の話やねんw」


「ダメなことはダメって怒るし、
 ちゃんとほめてくれるし
 やさしいから」


「お前やって、ええ母親になると思うけどな
 明るくて優しくて飯も上手い」


「わたしは…なれないよ」


「そんなんわからんやろ?
 照史はええ父親になるで、絶対」


「うん、それは思う!
 ぜったい、いいパパになるよね♥

 だから…」





「はやく…てをはなさなきゃだね」





視線を床に落として
寂しそうに微笑む彼女



そんなつもりで言ったわけちゃう



流れで発した自分の言葉で
思いがけず傷付けてしまった


でも


謝ったら認める事になる

返答に迷っていると

視線を戻した彼女が
俺の頬を撫でた





「しんぱいしなくても、
 だいじょうぶだよw」

「…何がやねん」

「いったでしょ?みんなを守るって

 ちゃんと守るから…
 もうちょっとだけ待ってね」





人差し指と親指を近づけて
「もうちょっと」を指で表しながら
赤い顔してニコニコと笑う





違う
違うやん


お前らが別れればええなんて
俺は微塵も思ってない


なんとかならへんのかと
今でも考えとんのに


真逆の事を心配してると思われてるんが
とてつもなく悲しくて
言葉が出てこない





そんな俺の肩に手を置き
「おフロはいる!
 かえっちゃダメだからね!」と言うと
パジャマを持って風呂に向かった彼女





結局、ろくな事が言えない自分がイライラする


ふと目を向けたデスクの上で伏せられた
オレンジの見慣れた写真立て


倒れたのか
倒したのかわからないソレを立てると


あの頃の2人の笑顔が妙に悲しくて


なんとなく
もう一度伏せた





そのタイミングでマネージャーからの電話

こんな時間に掛かってくるのは
まぁろくな事ではない

急な呼び出しではない事を祈りながら
ベランダに出てから画面をタップした

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作者名:向日葵 | 作成日時:2022年6月8日 10時

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