▼28 ページ28
・
ふと顔を上げると、客席で応援しているスイと目が合った。
そう、あの時も僕は助けられた。
__________
「どうして言わなかったんですか!あの男の子の為だって」
大将にクビだと怒られて厨房を出ると、浴衣を着た男にぶつかった。
「その子は乳製品アレルギーで、皆と同じお菓子が食べたいと泣いていた。だから全員分のお菓子を変えたんじゃないんですか?」
彼の言う通り、アレルギーの子供が泣いていてどうしようも無くて。
でも、何も相談しないで勝手に変えてしまった僕が悪い。
「あの、貴方にお願いしたいことがあるんです」
軽いお辞儀をしてその場を立ち去ろうとすると、彼に呼び止められた。
「貴方にお菓子を作って頂きたいんです」
「……僕に?」
それは思いもよらないお願いで、その一言で僕の人生は変わったのだ。
・
彼に頼まれて“鹿楓堂”という喫茶店でお菓子を作った。
その日に来店した女性4人組のお客様。
会話からその中の1人が、今度手術をすると話していたのが聞こえた。
「…スノードロップかな」
デザートのケーキに添えた花びら。
花言葉は“希望”。
どうか手術が成功しますようにと、僕の願いも一緒に込めて。
・
「あの!本当にありがとうございました」
鹿楓堂を後にしようとお店を出ると、後ろから彼が追いかけてきた。
深々とお辞儀するその姿勢から感謝の気持ちが沢山伝わってきて、これでお菓子作りは最後と決めていた僕は決心が揺らぎそうになった。
「私の店で一緒に働きましょう」
「えっ、?」
違う仕事を探すと伝えると、突然言われたその言葉。
驚いて、思わず聞き返してしまった。
「あんな素敵なお菓子をもう誰も食べられないなんて困ります!俺も貴方のお菓子、一生食べ続けたいです!」
「……ぷっ、」
それはまるでプロポーズの台詞みたいで、お互い思わず吹き出す。
この時、僕は一生この人の元でお菓子を作りたい。
そう心から思えた。
__________
『椿くん、頑張れー!』
スイ「ちょ、A静かに…!」
『あ、ごめん。つい…』
Aの大きな声援に、思わず笑みが零れる。
応援してくれてる皆、鹿楓堂、そして僕のお菓子をいつも楽しみにしてくれてるお客さんの為にも。
負けてなんかいられないんだ。
・
426人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
しゃち(プロフ) - みたらしさん» 初めまして!コメントありがとうございます(*^^*)ドラマすごく良かったですよね〜最終回迎えてロス気味です、、応援ありがとうございます!!これからも楽しんできて頂けると嬉しいです(≧▽≦) (2022年4月8日 15時) (レス) id: 94abb641fa (このIDを非表示/違反報告)
みたらし - 私もドラマを見てハマりました!更新頑張って下さい! (2022年4月7日 9時) (レス) id: 122f030fb9 (このIDを非表示/違反報告)
雪音(ゆのん)(プロフ) - こんばんは。しゃちさんからの友達申請ありがとうございます!申請許可したので、仲良く出来たら嬉しいです!よろしくお願いします! (2022年2月11日 17時) (携帯から) (レス) id: 7d58386e1a (このIDを非表示/違反報告)
しゃち(プロフ) - 雪音(ゆのん)さん» そうなんですね、ありがとうございます!申請してみます! (2022年2月10日 18時) (レス) id: 3c2bff670d (このIDを非表示/違反報告)
雪音(ゆのん)(プロフ) - 私の方からもう一度メッセージを送ってみるので通知が来たら申請の許可をお願いします。 (2022年2月10日 18時) (携帯から) (レス) id: 7d58386e1a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:しゃち | 作成日時:2022年2月1日 0時