打ち明ける勇気 ページ8
雲雀の隣に座るAの手は震えていた。雲雀はその手を取り、真っ直ぐ目を見る。
「ゆっくりでいい。何分でも、何時間でも、君が話したくなるまで待つから」
「……ありがとうございます。話す前に、我儘言ってもいいですか？」
「いいよ」
「このまま手を握っててください。雲雀先輩に手を握っててもらえると大丈夫なんだって安心できるから」
「わかった」
雲雀はAの両手を握った。
ゆっくりと深呼吸をしてからAは自分が話していい範囲の自分に課せられているものについて話し始めた。
おしゃぶりのこと、風を操る力のこと、おしゃぶりを無理矢理外せば恐らく死ぬということ。
「このおしゃぶりを持つ者はアルコバレーノと呼ばれます。リボーン君を含めて７名。そして私の風のおしゃぶりは少し異質なんです。アルコバレーノは同じ日におしゃぶりを授かり、呪いを受けて赤ん坊になった。私は赤ん坊になる代わりに別の呪いを受けた」
「その呪いは？」
「……話せません」
「わかった」
「私がおしゃぶりを隠している理由は、これを持っていれば力のある人に狙われるからです」
「赤ん坊は大丈夫そうだけど……」
「リボーン君はマフィアのボンゴレファミリーに属していますから。対して私は無所属。どこにも属していない私はまだどうとでもできるんです。ボンゴレ以外に頼れるところはありそうなんですけど……肝心のその人にはまだ話せていません」
そう話すAの脳内にディーノが浮かぶ。ボンゴレファミリーの同盟でもあり、リボーンの元教え子でもあるディーノならきっと……。
「どこ？ 君が所属しようと思ってるところ」
「リボーン君が所属しているボンゴレファミリーの同盟ファミリーです。もしツナがボンゴレを継ぐときは、そっちに。でもまだ遠い未来です」
雲雀が握っていたAの手に力が入るのを感じた。
「雲雀先輩、私はまだまだ話せないことを抱えています。そのどれもが今話したことと同じぐらい重くて、危険なものです。だからきっと、雲雀先輩に沢山迷惑をかけることになります。その時はきっと私、雲雀先輩を頼っちゃいます。それでも……私のこと好きでいてくれますか」
「何言ってるの。僕は君の隣が落ち着くから君のことを選んだんだ」
「……えへへ」
だらしない笑顔を見せるAの頬を撫で、雲雀はぽすん、とAの膝に頭を乗せた。
「お昼寝ですか？ おやすみなさい」
今度は雲雀の頬をAが操る風が撫でた。
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作者名：うがつ | 作成日時：2022年9月22日 23時
