お見舞い ページ43
「ん、雲雀先輩かな？」
朝。食パンにジャムを塗っていたAがテーブルの上で震えている携帯を手に取る。だがそれは雲雀の番号ではなかった。
「この番号は確か……はい、もしもし？」
『もしもし、草壁です』
「草壁先輩、どうしたんですか？」
『委員長が今日入院し、昼食を持ってきてほしいと伝言を受け取りまして』
「……なるほど、雲雀先輩体調でも崩したんですか？」
『はい。風邪をこじらせたみたいで』
そんな話あった気がする。と思いながらAは弁当を作って今から行く、と草壁に伝えて通話は終了した。
手早く弁当を作り終え、道中でフルーツも買ってAは並盛中央病院に来ていた。草壁から雲雀の部屋番号は聞いていたが、受付にお見舞いに来たことを伝えなきゃいけないと思い、受付に向かう。
「雲雀恭弥のお見舞いに来ました」
「ヒバっ……コホン、わかりました」
案の定看護士が青ざめる。それもそうだろう。並盛を牛耳っている雲雀の元に普通の女の子がお見舞いに来ましたなんて言ったら普段の２人を知らない看護士ならば驚く。
それからAは雲雀の病室へと向かった。
――コンコンコン
「失礼します。……え、何してるんですか」
「退屈だからゲームをしてたんだ」
「ゲーム」
「僕が寝てる間に音を立てたら咬み殺すっていうゲーム」
「物騒で雲雀先輩らしいですけど風邪こじらせて入院してるんですよね？ 大人しく寝てた方がいいと思うんですけど」
「僕に命令するの？」
「命令じゃなく心配してるんです。お弁当置いて帰りますよ、私」
ムッとするがせっかく呼びつけた人間がすぐに帰るのは面白くない。雲雀はくるりと自分のベッドの方へと向かった。
「お弁当食べます？ それともフルーツにします？」
「リンゴ」
「はいはい」
リンゴの皮を剥き、雲雀の口元へ運ぶ。
「私フルーツ選ぶ才能あると思うんですよね」
そう言ってから切ったリンゴを自分で食べ、やっぱり美味しい、とうんうんと頷いていた。リンゴを食べた雲雀も食べたリンゴがみずみずしく美味しいことに気づく。
「次あれ食べたい」
「はーい」
リンゴを食べ終え、一拍おいてから雲雀はオレンジを指す。
「それじゃあそろそろ帰りますね。明日も来ますから」
「ん、またね」
「はい。また」
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作者名：うがつ | 作成日時：2022年9月18日 16時
