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七十二時間は、本当に長かった。大人しく中を降りればよかったと何十回と思うほど長かった。
最初の1日弱程度はヒソカで暇をまぎらわせていたが、未熟な受験生が増えてくるとそうもいかない。
あまりヒソカに絡みすぎると変な目で見られるし、トランプ遊びも趣味ではない。結局Aはほとんどの時間を悶々としながら過ごした。
しかも――キルアが来ない。初々しくて可愛いほうの弟が来ない。彼なら余裕だろうと思ったのに。
『
『落ち着きなよ……♠』
順にギタラクルとヒソカの念文字だ。Aは無視してたしたしと床を踏んだ。
弟だと判明した瞬間に気掛かりになるこの現象。ああこれが家族愛。
『残り三分です』
ふらふらと出てきた男がひとり、どうと倒れて事切れた。
『残り一分です』
また一つ扉が開く。そこから出てくるのは緑色のブーツ、青い扁平な靴、それから――
見覚えのあるスニーカーを視認した瞬間、Aは全力でダッシュした。
「ケツいて」
「遅いよキルア!」
「ぎゃあ!?」
俊敏な動きで避けようとした弟を捕まえて一周振り回す。
本気で蹴られた。
普通なら腹を貫通しかねない見事な蹴りである。ギタラクルからの殺気もまずいのでAは大人しくキルアを解放した。
「Aさん、本当についてたんだ!」
「す、すごいな……」
「……死んでりゃよかったのに」
順にゴン、クラピカ、キルアの台詞。Aは棘を見なかったことにしてキルアに話しかけた。
「間に合ってよかった。二人と一緒だったんだね」
「……別に、五人だけど」
「うん?」
『残り三十秒です』
首を傾げたのと同時、同じ出口から男がさらに二人転げ出てきた。
「レオリオ……と、えーっと、あのジュースの人」
「トンパさんだよ」
「そうそれ。あれ、きみたちは大丈夫だったの? キルアは平気だっただろうけど」
さん付けとは恐れ入る。ゴンはにこにこと笑った。
「うん! あのジュース、ちょっと味がヘンだったから。Aさんは平気だったの?」
「Aでいいよ。うん、わたしも平気」
毒が効くような身体ではない。キルアと違って薬も効かないのが玉に疵。
そっかあ、すごいや、と言うゴンがあまりに無邪気なのでしばし呆けていると、キルアに強く押し退けられた。
「用がないならあっち行けよな」
「ああうん、ごめんごめん」
わかりやすく嫌われている。Aは少し苦笑して、五人に向けて手を振った。
「じゃあね、次の試験も頑張ろう」
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海野(プロフ) - sakuさん» そのとおりですね。指摘ありがとうございます、記述を訂正しました。 (2019年4月9日 8時) (レス) id: 542ac62a81 (このIDを非表示/違反報告)
saku(プロフ) - すみません。ページ12で『白日の詐欺師』にも隠は効くっていうの、そもそもの能力発動条件をクリア出来てないんじゃないでしょうか?纏以外使えないという条件でしたよね?間違ってたらすみません! (2019年4月7日 12時) (レス) id: 7af2b9ccfb (このIDを非表示/違反報告)
海野(プロフ) - sakuさん» コメントありがとうございます。心外ピエロの作者と個人的に交流があるのですが、sakuさんがどちらにもコメントをくださっていてびっくりだねという話をちょうどしておりました。いいですよね。続編も続けられるよう頑張ります! (2019年2月3日 8時) (レス) id: 2600401e00 (このIDを非表示/違反報告)
saku(プロフ) - 心外ピエロ私もよんでるんですが…いいですよね!あと、更新お疲れ様です。相変わらずとても面白かったです。 (2019年2月2日 22時) (レス) id: ee214ae639 (このIDを非表示/違反報告)
海野(プロフ) - 操菜 荘椏さん» コメントありがとうございます。これからも頑張ります。 (2019年2月2日 19時) (レス) id: 2600401e00 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:海野 | 作成日時:2019年1月16日 13時