恋と愛と依存【轟焦凍】 (ページ6)

今日:11 hit、昨日:5 hit、合計:23,584 hit

５ページ6

.

朝起きるとそこには見知らぬ天井が広がっていて昨夜のことを思い出す。

あぁ、そっか。私やっとあの家から出たんだ。
静かな朝にやっと実感が湧く。

まだ把握しきってない家の中でリビングに歩く。

誰もいないリビングのテーブルの上に一枚の紙を見つける。
その紙はショートさんからの置き手紙だった。

" 仕事に行ってくる。自分の家だと思って好きにしてくれて構わない。昼ご飯代も置いておく。 "

そう書いてあった。
そして、置き手紙と一緒に１万円が置いてあった。

『お昼ご飯で１万は使わないけどなあ…』

とりあえず、洗濯から始めたいな。
その後、買い物に行って干して掃除しよう。

よし、と１人意気込むと洗面所に向かう。
昨日は慣れない家であまり周りを見てなかったけどホテルのような洗面所だなあ。

水が出るところが２つもある。
…一人暮らし、なんだよね？２つも使うのかな？

本当に一人暮らしなのかと疑うほど貯まっている洗濯物に腕まくりをして気合いを入れる。

『次は買い物に行こう…』

誰に言う訳でもないけどポツポツ独り言を言いながら家事をこなしていく。

ここは私の元の家から少し距離のある場所なのでこの辺の土地勘は皆無だ。
昨夜は真っ暗闇の中、ショートさんの後ろをついてきただけだったので全く道も分からない。

ちょっと時間はかかりそうだけど乾燥機付きだし大丈夫か、と買い物に行く準備をする。

少しの間、あの家にお邪魔するんだしこの辺りの土地を知っておいて損はない。

ふらふら散歩がてらスーパーを探す。

『ここでいっか。』

偶然見つけたスーパーに入り、今日の夜ご飯は何にしようかなと悠長に買い物をすませ
来た道を戻り、家に帰る。

…鍵が、ない。

家に、入れない…、と思っているとナイスタイミングで違う住人の方が
共用玄関の鍵を開け入っていく。

こっそりとその後ろについて入ったはいいけど
家の方の扉も鍵がかかっていた。

どうして家を出るとき気づかなかったんだろう。
さすがは高級マンションだけあって完全オートロックだ。

深い溜息をつきながらドアの前に座り込む。

いつ帰ってくるのかな、早く冷蔵庫に入れないと痛んじゃうな、
と考えながらショートの帰りを待つ。

どこまで行っても、どんな時でも、
私は無力だ。

.