26 ページ26
.
「お疲れ様でした〜」
結局、この日常連さんは来店しなかった。
……良かったのか、なんなのか。
.
更衣室で帰り支度中、店長に呼び止められる。
「Aちゃん！ お店の余り物だけど、これ持って帰って！」
「え、あ、ありがとうございます……？」
捨てるだけだからと、店長が袋いっぱいに入ったパンをくれた。
「弟くんとか誰かと分けてもいいからね！ じゃ私お先に。 お疲れ様ー」
「あ、はい！ お疲れ様でしたー！」
店長が出て静かになった更衣室。
貰った袋から美味しそうなパンのいい匂いが鼻をかすめる。
「あ……コーンパンだ……」
袋を覗くと、コーンパンが目に入る。
『あとコーンパンも一つ下さい』
『この間おすすめしてくれて、食べてみたら美味しかったので』
ふと、いつかの嬉しかった記憶が蘇る。
「……ふふ」
焦って自分が作ったパンを口走っただけなのに、美味しかったからって常連さんが次の日も買ってくれたんだよね。
「……な〜に一人で笑ってるの？」
「てっ、んちょう？！ びっくりした……店長、さっき帰ったんじゃ……」
「あぁ、Aちゃんに伝えようと思って戻ってきちゃった」
「……私に？ なんですか？」
「外で待ってるわよー、あの人」
「あの人？ ……ってまさか」
裏口へと向かい、慌ててドアを開けると壁にもたれて立つ常連さんが居た。
「あ……こんばんは、Aさん。 ……お疲れ様？」
目が合うと優しく微笑むその姿に、少しだけ鼓動が速くなるのはジェソクに似てるせいだ
……きっと。
「常連さん……何でここに……」
「うーん、何でって言われても……話がしたかったから？」
「その、常連さん私」
「スンチョル」
「……え？」
「俺の名前。 チェ・スンチョル。 ……もう忘れちゃったかな。 "常連さん" もいいけど、スンチョルって呼んでよ」
『妬けちゃうから……スンチョルって、呼んでよ』
いつかの記憶が蘇ってきた。
「あ、えと……」
併せて前後の記憶も蘇り、途端に恥ずかしくなり俯いてしまう。
恥ずかしさのあまり何も言えなくなってると
「Aちゃん〜」
後ろから店長の声がした。
「店長……！？」
少し開けたドアから顔を出す店長が居た。
「お店の裏口で何してるのかしらAちゃん〜？」
裏口の施錠をする店長の顔が、今日はどことなくニヤニヤしてる気がする。
.
ラッキーカラー
あずきいろ
おみくじ
おみくじ結果は「末凶」でした！
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1614人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
tyai - 本当にいつも素敵なお話をありがとうございました！ずっとだいすきです💓 (2023年4月2日 14時) (
レス) id: 4eebb26101 (このIDを非表示/違反報告)
ももこ(プロフ) - 完結おめでとうございます！とにかく大好きで何回も読み直してます… すんちsideの話はもちろんですが、じすはんに冷やかされて嫉妬して拗ねる話がみたいです笑 (2023年3月30日 14時) (レス) id: 7eba4932cc (このIDを非表示/違反報告)
yuikuma965(プロフ) - すごくキュンキュンしました！私もこんなふうに追いかけられたい…笑短編集、嫉妬とかみてみたいです(´∀｀) (2023年3月30日 2時) (レス) @page46 id: 1a04ea6328 (このIDを非表示/違反報告)
くす(プロフ) - お疲れ様でした(>_<)続編も楽しみすぎて、夜も寝られません、、、ご無理のない程度に更新楽しみにしてます！！！！ (2023年3月30日 0時) (レス) @page46 id: 1558d9da93 (このIDを非表示/違反報告)
diva05(プロフ) - このお話すごい好きです！恋人になった後の2人の関係性や、そうなってからの夜のお話も見てみたいです。 (2023年3月29日 19時) (レス) @page46 id: d2c25335f0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：MIE | 作成日時：2023年3月13日 1時
