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ある事がきっかけでまふ君に彼女がいると噂された。それは誰か知っている。私だ。…当たり前だよね、いけない事をしているのだから。
一部のリスナーさんからは罵声を浴び、動画のコメント欄にはその噂話で沢山。まふ君は精神面でも辛くて、耐えられなくて、歌い手業界から脱退した。
私には「探さないで下さい」とのLINE。ここ3年間は会っていない。
だがある日、路地で彼らしき姿を見つけた。
『…まふ君?』
声を掛けてみると振り向く後輩。だが彼は明らかに童話に出てくる人の格好(赤いスカートに頭巾片手に籠)をしていた。
「マッチ1本500円ですよ〜!」
1本とは言えない程の値段で売り捌き、私の事は忘れていた。
これじゃあまるで、マッチ売りの少女ではないか。私はその場から逃げ出し、ひたすらまふ君と叫んでだ。
…という夢を見た私は、朝の3時に起き上がった。
『…。』
朝と言っても良いのかというくらい外は真っ暗で、そのマッチ売りの少女は隣でぐっすりと眠っており、お互い裸の状態。
早速してしまったのだ、行為を。
『マッチ…』
いや、例え童話の人物でなくてももし歌い手界から居なくなったりしたら…どうなるのだ。
末恐ろしい。
『……あーー……』
ベットに座った状態で腰を軽く2、3回叩く。当分痛みは取れなさそうだ…。
綺麗で整った顔をした彼を見つめると、へらっと笑う。
それにビクッとしてかけている布団を胸まで持ち上げると「チビ」と口にした。
うらたぬきさんかなって思ってごめんなさい。
『(でも…そのうらたぬきさんにもバレたら、本当に本当に…どうなっちゃうんだろう)』
深く、長く溜息を吐いていると、寝ていると思っていたまふ君の手が私へと伸びてきた。
『えっ』
その片手は私の頬を包み、温かい体温が伝わった。
隣を見ると目を細めてにっこり笑った。
「先輩、おはようございます」
行為が終わった後の最初の言葉。彼は平然としている。まだ意識がはっきりとしていないのだろう。
「お、おう、お、お、おおはよう!!」
私は普通に答えた。
…つもりだった。
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作者名:花 x他2人 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/list/ryou/
作成日時:2018年2月2日 22時