その名を呼んでも ページ5
「ここが…ファミリア」
ドクンドクンと激しくなる鼓動がここだと訴える
港らしき場所に降り、目の前の島を見据える
なにか建物らしき物があったと思われるが、それは見る影もなく
所々入れそうな場所があったとしても中には何も無い
バスターコールがいかに残酷かを思い知らされた
町並みがあっただろう通りを中心地に向かって歩いていく
脳裏に浮かぶ夢で見たあの町並みと重なっていく感じがして知らない土地なのによく知っているように歩いた
そして島の中心に広くある残骸はあの城と重なる
周りは柵がされ、立ち入り禁止と書いてあるがそれを軽く乗り越え中に入る
入口に映像電伝虫がいるのは分かっていた
『ここにある事が全てだ』
そう頭に響き、焼け落ちた瓦礫の中をどんどん進んでいった
瓦礫に埋もれた地下への階段を下っていく
この城の跡地に入ってからずっと見えているのは20年前の悲惨な戦場。きっとこの声の主が真実を見せてくれているんだろう
たどり着いた場所もめちゃくちゃになっていて、隅々まで手を回しているのだと政府の執拗さを感じた
これ以上どこに秘密があるのかと見渡すと急に壁に現れたのは、歴史の島で見たあの模様だった
それに少し触れるとたちまち壁がなくなり道が続いていく
そしてその奥にある部屋の中央にはホコリや汚れの一切ない透き通った水が入ったゴブレットが置かれていた
『清めの水を飲み干し真の姿となれ』
そう声がして、ゴブレットを手に取り全てを飲み干した
ドクンドクンドクンッ…！！
身体の奥から全身に響くように何かが暴れ出す
「う"っ…ぐっ…！！
…っああぁぁぁあ！！！」
血が沸騰するかのように全身が熱く、骨が軋み痛みに立っていられずその場に倒れた
呼吸が上手くできずだんだんと目が霞み意識が遠のいていく
「(ぁ…だれ、か……スモ…カ、さ…)」
その名を呼ぶにはもう遅くて…
そして、そこで意識を手放した
『生きて…』と赤子をシャボンに入れ海に流す女性
その後ろに見えるのは焼け落ちていく城に建物
シャボンは海王類に守られ安全な島まで運ばれていった
その後次々と政府の陰謀が暴かれていく
そして最後に聞こえた優しい声
『あなたの名前はアマルド・D・イヴァン』
その声を最後に何も聞こえなくなった
「アマルド…D…イヴァン」
目を覚ましたAは本当の名を呟き立ち上がる
その姿は、紅い目の獣人"鬼神"だった
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作者名：Ancop | 作成日時：2023年3月29日 23時
