女中将奮闘記。-世界に生きた証を-【ONEPIECE】 (ページ16)

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涙の理由ページ16

Aを送り届けたあと、静まり返っている本部内廊下を歩くスモーカーの足音が響く

「(伝えるつもりはなかったが…あんな顔見ちまったらもう、止めらんねェな)」

ヒナを送って店に戻ればAの姿が無かった
海兵に聞けばさっき出て行ったというから、慌てて帰路を探しているとベンチに座るAを見つけたので安堵の溜息をつく

近づけば、月明かりに照らされるAがなぜだか、そのまま消えてしまうんじゃないかと思うほど綺麗で、水平線を見つめる横顔が泣きそうな、儚い顔をしていた
存在を確かめるように声をかければ、振り向いたのはいつものAで、無性に愛しさが込み上げた

「お前が好きだから、顔が見てェんだ」

下から見上げるとAは驚いた顔をしてその綺麗な瞳に涙が溜まっていく。流れるそれを親指で拭った

「イヤか？」

「ッちがっ…嬉し、だけどっ…」

涙の理由はイヤだからという訳ではなさそうだが、止まりそうになかった

「っわかんなくて…スモーカーさんの事はすきだけどっ…どうすればいいのかっ」

「困らしちまったな。すまねェ」

「謝んないでっ…わたしがっ、ごめん…」

「別に返事が欲しいわけじゃねェんだ。だから泣くな、A」

泣き続けるAを抱き締め、頭を撫でる
胸に顔を埋めるAは何度かズズっと鼻をすすっていたが少しすると落ち着いたらしく、徐々に力が抜けていった

「…ありがとう、スモーカーさん」

「あァ。」

少し鼻声で言うAにフッと口元を緩ませる

しばらくすると、耳元で規則正しい息遣いが聞こえてきたので見やるとAは眠っていた
スモーカーは起こさないように抱え直し、本部へと足を向けた

「送りオオカミにはなっちゃいねェが、1歩手前だなこりゃァ」

月明かりの明るい夜道に、葉巻の煙がゆらゆらと跡をのこしていった

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『探…て… 』

『目……は近… 』

ドォン…！！ドゴォン…！！

何かの攻撃に破壊される街並
逃げまどう人々
崩れ燃え上がる城の中で塵になっていく文書たち

『 …な……生…て … 。ごめ…ね… 』

「っ、はっ…！！はぁっ…はぁ…。夢か…」

今まで見てきた夢には無かった残酷な影像に飛び起きると、Aはびっしょりと汗をかいていた

「本当に…ただの夢なの…？」

掌に落ちた涙を握りしめ、纏わりつく気持ち悪さを流すようにシャワー室へ向かった