ひ め ご と 【基山ヒロト】

終章 ページ37

「ねえねえ、聞いた？あそこの屋敷の遊女、日本橋から身を投げたらしいわよ」









「聞いた聞いた！男を追いかけて、死んじまったらしいねえ。かわいそうに。まあ花魁でも、幸せっていうもんじゃないのねえ」









「そうかしら。愛する人と、永遠にいられるならその人は幸せなんじゃない？」









「ええ〜？私は、死にたくないね！！いつか身請けしてもらって、たんまりと贅沢するんだ」









「あんたは、本気の恋愛したことないからそう思うんだよ。」









「あんただって、したことないだろ！！！」









「あら、そうだったかしら」









二人の遊女が、楽しそうに話す声が聞こえる。




「さあ、仕事仕事！！今日は、お客がたくさんくるからね」








「私たちも、負けてらんないね」









今日も、吉原は男の客やら遊女やらで賑わっている。









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季節はめぐりめぐって、春。









桜吹雪が、吉原の街を舞っている。









果たして、彼女は本当に幸せだったのだろうか。









その答えを知るものは、誰もいない。









「ようこそ、おいでくんなまし______」









ただ、Aという花魁の存在はこの吉原というキャンバスに紅く美しく描き残し









いつまでも、人々の心のなかに残り続けた________

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