8. ページ8
彪太郎.
『……おった、彪太郎！』
岡「あ、Aちゃん」
『おつかれ、』
岡「お疲れ様です」
たたたっと、軽い足取りで駆けてきたAちゃん。俺が想像してたよりも元気なんかなあ……そう思ったけれど、顔色は悪いままやった。
他の人よりは、女の子のしんどいこととか、色々理解してる自覚はある。でも、俺自身がなったことあるわけちゃうし、そもそも勘違いかもしれへん。シンプル体調不良の可能性もあるなあ、それはそれで心配や。
年上やし、先輩やし。どちらかと言うと俺は彼女に守られっぱなしで、この歳になるまでは、それを素直に享受して生きてきた。
『あ〜……ココア、ありがとう。めっちゃあったまった、ほんまに助かる』
岡「……よかった、やっぱしんどかったんですよね？」
『恥ずかしいけど、まあ……よう分かったな、』
岡「Aちゃん、分かりにくいけど、俺が勝手に見てるだけやから」
『……うそお、』
岡「ほんまに。やから、大丈夫」
人に悟られたくないのも、そのために必死に頑張って隠してるのも、全部分かってる。でも、そういうのんって言われたくないやん？他の人から。
やから、あんまり多くは語らへんようにしてる。AちゃんにはAちゃんの気持ちとか、そういうのがあるはずやから。
普段はほんまに分かりにくいはずやのに、体調が悪くて気が緩んでるのか、今はかなり分かりやすく目が潤んでいる。今にも溢れ落ちそうなほど涙を溜めると、きゅっと唇を噛み締めた。
何となくやけど、その表情を、かわいいなんて思ってしまう。
『……ありがとう。ほんまに、うれしかった』
岡「ほんまですか？……嫌ちゃうかった？」
『嫌なわけ！そりゃ、後輩に気遣われるのは情けないと思ったけど……でも彪太郎の優しさは、ほんっまに嬉しいねん』
底抜けに明るくて、パワフルで、前向きな人。
時々逃げたくなるほど真っ直ぐやから、真正面からぶつかって来られると、無意識に目を逸らしてしまう。Aちゃんは、例えようがないほどきれいな人やと思った。
岡「後輩やけど、リーダーやから」
『……うん、せやなあ、』
岡「たまには頼ってください、もたれてくれてもええし」
Aちゃんが俺たちを守りたいと思ってくれるように、俺もAちゃんのことを守りたいから。
それくらい大切に想ってるんやって、いつかは気付いてくれますように。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 848人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：流星
| 作者ホームページ：https://twitter.com/sst__05
作成日時：2023年3月14日 1時
