11. 手を繋いで ページ11
風雅.
風「……あかん、ほんまにむり」
岡「もうやめとき、無理したらあかんから」
斗「顔真っ青やもんな」
まさか自分がここまでお化け屋敷に耐性がないとは思ってなかったけど、これ以上無理したらほんまにしぬかもしれん……そんなことを思って素直にリタイアした。罰ゲームくらいなら余裕で受けるし。
『うん、風雅は座っときー？私行ってくるわ！』
琉「すご、Aちゃん全然普通やん」
『こういうのはちゃちゃっと行ったらええねん』
拓「いやでもA、」
俺の頭をぽんぽんと撫でたかと思えば、何かを言いかけた拓哉の言葉も聞かずに走り出したA。
その横顔はいつも通りに見えたけど、何となく無理をしているように感じて、そこでやっとひとつの考えに辿り着く。俺はお化け屋敷の恐怖に耐えかねて忘れてたけど、拓哉は多分ずっと分かってた。
やから、ちゃんと止めようとしててんけど。
斗「西村くん、どうしたん？」
拓「うーん……本人が言わんならええかって思ってんけど、昔から暗いとこ苦手やねんな？」
岡「Aちゃんが？」
拓「そうそう、ほんまに泣いちゃうくらい」
琉「なんか意外やな。Aちゃんそういうのなさそうやのに」
風「……あれは多分やけど、平気に見せるのが上手いだけよな」
今回に関しては、俺がリタイアしたから尚更自分はちゃんと行かなあかん、そんな思いで突っ走ったんやと思う。
流石にどれだけ暗いところが苦手か知ってるから、ほんまに申し訳ない。昔よりはマシになってるけど、舞台裏の特に暗い場所を移動するときは、今でも俺か拓哉の衣装に掴まったり、俺らが手を差し出せば繋いでくれたりするほど。
トラウマとかそんなんではないらしいけど、やとしてもあそこまで怖がるんやったら相当やと思うねんな。
風「あ〜……あかん、俺のせいやわ」
岡「ふうさんが悪いんちゃうよ。俺らも知らんかったし」
斗「うん、ほんまに。何で言うてくれへんかなあ」
拓「かっこいいお姉ちゃんでおりたいんやろうなあ、やっぱり」
琉「……なんかそれ、寂しいよな」
琉巧の一言に、全員が項垂れるように頷いた。
Aが、いつまでも明るく、かっこよく振る舞おうとしてくれるほど、心の距離が離れていくようで。同じくらいAを支えたいと思う俺たちの気持ちは、やっぱり届かない。
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作者名：流星
| 作者ホームページ：https://twitter.com/sst__05
作成日時：2023年3月14日 1時
