動き出せ、初恋《 Yoshinori.M 》 (ページ8)

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8. ページ8

貴方.

大「……Aがどんどん前に出てくるのはええことやねんけどさ、正門寂しがってたで」

『え……？』

大「ほら、皆でバンドやっとるやろ？Aはもうバンドより歌の方がメインになってきてるから」

「寂しいんちゃうかな」と呟いた大ちゃんは、正門くんのことをじっと見つめた。寝てしまっているから表情は見えないけれど、大ちゃんの言葉の影響か、その横顔は、どこか寂しそうに見える。

大「やからなんかなあ、普段あんまり酔わんくせに、A、A〜ってうるさいねん。ほんまはもっと会いたいんちゃう？」

『……正門くん、そんなん言うてたんや』

大「こいつもAのこと大好きやからなあ」

大ちゃんはにやにやと笑いながら、「良かったやん」と私を見やる。……別に、正門くんは私のことをそんな風には見てないと思うけど。飽くまでも妹のような、そんなところだと思う。

それでも嬉しくなってしまうのは、やっぱり私にとって正門くんが大切な人だから……クラスメイトや友人には抱いたことのない、特別な感情。伝えるか伝えないかは関係なく、大切に持っておきたいと思った。

『……でもな、私、どんなに遠くにおっても、正門くんとはどこかで会えると思うねん』

大「おお、それは何で？」

『分からへん……けど、ずっとそばにおってくれる人な気がして』

「そう信じたいだけかもしらんけど」と呟けば、大ちゃんはそれはそれは優しい顔をして笑った。「そんなネガティブにならんでええよ」なんて、私を励ましてくれているのか、何度も何度も丁寧に頭を撫でてくれる。

きっと大ちゃんの方が毎日大変なのに、いつもと変わらない包容力と優しさを感じて、どうしても泣きそうになった。

大「……A、この先さ、そう簡単には行かんときが来ると思うねん。こんな世界におったらやっぱり」

『うん……そやね』

大「それでもさ、好きな人のこと大切にするのだけは、忘れたらあかんよ」

『……大ちゃん、』

大「正門のこと、大切にしいや」

「女の子に言うことちゃうか」と笑った大ちゃんは、少し恥ずかしそうに顔を赤くさせた。