38. ページ38
貴方.
小「お前ほんまに泣きすぎ！目真っ赤やん」
『いや無理があるやろ、あれで泣かへんの……まだ泣けるわ』
小「皆若干引いとったで」
『それはもうちょっと労ってや！』
無事に収録を終え、各々の楽屋へと戻る。今日が終わればもう本格的に会う機会もなくなって……そう思うと名残惜しくて、何となくずっと小島のそばにいた。「ひっつき虫か！」とか何とか言われたけれど、無理やり引き剥がしはしない彼の優しさにまた泣けてくる。
ハンカチで涙を拭いていると、後ろから誰かの腕が伸びてくる。衣装的にAぇの誰か……となると、もうそんなの一人しかいなくて。拒否するわけもなく受け入れると、ぎゅっと抱き締められる。
正「……なぁんか久しぶりや、Aのことぎゅってすんの」
『お久しぶりです……え、ほんまに久々すぎる』
小「何でハグされてそんな普通やねん」
『普通ちゃうよ……これでもびっくりしてる、泣きすぎて感覚おかしなっとるけど』
私を後ろから抱き締めた正門くんは、「おめでとう」ともう一度伝えてくれる。片方の手でぽんぽんと頭を撫でられると、何だか照れくさくて……それに、こんな廊下のど真ん中でやってたんじゃ、いつ誰に見られるかも分からないし。その分の恥ずかしさで何も言えず、ただ頷くことしかできなかった。
デビュー発表の日に電話をした以来、メッセージを送り合うことはあっても、顔を合わせることはなくて。だからかもしれないけど、こんなに近くで声を聞くと、ドキドキしちゃうというか……うん。
小「え、俺気まず。楽屋戻るわ、まっさんそいつのこと好きにしたらええよ」
正「おお、ありがとうな」
『好きにしたらええってなに？！……ちょ、ほんまに戻るんか』
正「はは、置いてかれたなあ」
『うん……さみし、』
私の気持ちに気付いている小島なりの気遣いなんだろうけど、正直それどころじゃない。顔が見えていないのが辛うじての救いって感じで……身動きもできずにただ固まっていると、そんな私に気付いたのか、正門くんはゆっくりと離れた。
何となくほっとして息を吐こうとした、けれど……彼は私の手を掴んで、そのままくるりと回転させる。
『……へ、』
正「やっとこっち向いた、」
『や、向かせたの、正門くん……』
私も私で、照れすぎて何も言えないし。「そうやっけ？」と惚けてみせる彼に、ますます胸が苦しくなった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 608人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「Aぇ!group」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
