36. 激励 ページ36
貴方.
『え〜……何で私小島なん……？』
小「シンプルに失礼やなほんま」
『ちゃうねんって、普段ふざけてる人の真面目なやつは絶対泣くから嫌やねん』
小「普段ふざけてる、がまず失礼やねんな」
「おかしいなあ」とわざとらしく首を傾げる小島は、家で書いてきたという手紙を広げる。
今日は最後のまいジャニ収録日。デビュー日までまだ時間はあるものの、全員揃って関西で収録ができるのは、もう今日くらいしかなかったらしい。Aぇやりとる、ちびっこたちもたくさんいて……なにわ男子の激励会という名目で開かれたそれは、クライマックスの手紙コーナーに移る。
皆の手紙にくすっとしたり、少し泣きそうになったり。第三者視点で楽しんでいたけれど、あっという間に私の番が来てしまった。
小「え〜、城田Aちゃんへ。覚えてますか？俺がまだAをちゃん付けで呼んでいた頃を。今思うと気持ち悪いですね」
『おい、何や気持ち悪いって』
小「……こんな風に、皆さんの前やとわざとキレたりしますが、俺の言動に怒ることは一回もありませんでした。忖度でも何でもなく、ほんまに優しい人です」
『……うん、』
小「実際は、このお手紙も他の後輩たちから勝ち取った権利です。良かったですね、慕われてますよ」
『ふふ、ほんまかな』
小「何で小島なん？って死ぬほど言われたから。まっさんに」
ちらりと座席の方を見やれば、くしゃくしゃの笑みを浮かべた正門くんが「言うな言うな」と笑っていた。
小「大吾くんに読むんやから我慢せえって言ったら納得してました。ワガママで困りますね。今後まっさんの遊び相手が減るんかと思ったら、ちょっと可哀想です」
『……うん』
小「ちょいちょいふざけましたが、まあとにかく優しい先輩ってことです。そして真面目です。Aより早く練習に来る人なんておらんのちゃうか？ってくらい、毎回一番乗りでした」
小島は、何やかんや泣き虫だと思う。もちろん涙を流しはしないけれど、あの大きな瞳を潤ませながら、今にも泣きそうな表情で手紙を読み進めた。一向に目が合わないのも、泣くのを我慢しているからだろうか。
そんなことを考え出したら私まで泣きそうで、やっぱり困る。
小「まあ、最後やし……ひとつくらいは本音言うてもええかなってことで、ここから先は聞き流しといてください」
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