動き出せ、初恋《 Yoshinori.M 》 (ページ4)

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4. ページ4

貴方.

小「Aちゃんってもんくんのこと好きっすよね」

『……は、』

小「うわ、汚ッ。口ゆるゆるやん」

『ちょ、ま、溺れる……！』

あの小島が正門くんのことをもんくんなんて呼んでた頃。まあそのブームもあっという間に過ぎ去るんやけど……人の色恋沙汰に興味もなさそうな小島が、まさか私の気持ちに気付いているなんて。それを言いふらしたりする人間じゃないのは知っていたけれど、まあびっくりするよね。

飲んでいた水を見事にぶち撒けた私を見て、「汚い」呼ばわり。やっぱ変わらんな、人間の根本ってのは。

『……なに？どこを見て判断したの？』

小「誰が見ても分かりますやん。もんくんのこと見すぎやし、ギターもめちゃくちゃ頑張っとるし。それももんくんに認められるためでしょ？」

『ちゃう！それは違うけど！……一緒にバンドできたらなって、ほんまに思ってるねん』

小「それは俺も思ってるけど」

「Aちゃん、ギター上手いし」なんて、今の今まで一度も言われたことがなかった、小島からの褒め言葉。何気に嬉しいねんけど……にやつきそうなのを堪えながら、「ありがと」と返しておく。

あの頃の私は、純粋な気持ちで信じていた。いつかは正門くんと同じグループのメンバーになって、デビューして……そうなれば、この関係性に特別な名前が付かなくたって、ずっと一緒にいられると思った。変わらない二人のまま、彼のすぐ隣で笑っていられる。

小「ええやん、人を好きになるのは悪いことちゃいますよ」

『……何や腹立つな、それ』

小「何でやねん。相談乗ったろ思てんのに」

『余計なお世話や！……少なくとも今は、そんなことしてる場合ちゃうやろ』

私は同期の皆にかなり遅れを取っているけれど、最近とてもいい感じなのだ。少しずつまいジャニにも呼ばれるようになって、新人のトリオたちとセットで歌うことも増えた。先輩らしく頑張れよってことなんかなあ、なんちゃって……

まあ、それなりに浮かれていた。浮かれていたからこそ、周囲からの期待や評価が変わりつつあることに、少しも気付けなくて。

『もっとギターも練習しないとなあ。小島、ここ教えて！』

小「ギターは専門外やから他当たってくださいよ」

置いていくのは正門くんちゃうくて、私の方やったみたい。