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貴方.
正「明日は午後から撮影って大吾に聞いてんけど、午前は何もないん？」
『うん、二日酔いかな〜って念のために……まあそんな飲まんかったけど、』
正「言うてもちょっと顔赤いで」
『っわ、』
信号待ちで停車中、軽く頬に手を当てられて、「ええ感じに仕上がってるやん」と笑われる。もちろんさっきまでは良い感じに酔っていたけど、正門くんに会ったら全部吹き飛んじゃった。そんなの絶対に言わないけど……それなりに緊張してるんだと思う。
再びアクセルを踏んだ正門くんは、目線は真っ直ぐ前に向けたまま、「A」と私を呼ぶ。
『ん？』
正「ちょっとだけドライブしやん？せっかくやし」
『え……いいの？』
正「うん、卒業記念にな」
『わ、ほんまに？めっちゃ嬉しい！』
正「はは、安全運転で行くからな」
ふわりと微笑んだ正門くんの横顔は、月の光に照らされて、あまりにも綺麗に見えた。思わず見惚れて黙り込んでしまう前に、「お願いします！」と元気よく返事をしておく。
こんな時間がずっと続けばいいのに、なんて……願っても仕方のないことを思ってしまった。ここ最近、嬉しいことに仕事が増えて。一人でもグループでも、関西を離れることが増えている。喜ばしいことだけれど、何とも言えない不安に襲われることだってあった。
正「……A、寒ない？」
『あ、ううん、全然平気！正門くんこそ、』
正「俺は暑いくらいやから気にせんとって？ちょっとだけ窓開けよか、酔い醒ましに風浴びよ」
『わ〜、ええなあ。今めっちゃ丁度ええかも』
正「せやろ？」
正直、いつもより火照っていたから助かる。ひんやりとした風が頬を撫でて、思わずぎゅっと目を瞑った。二人で見る夜景なんて早々ないし……今後見られるかどうかなんて、誰にも分からない。今日という日の全てを噛み締めるように、膝の上に置いた手を、ぎゅっと握り締めた。
どんどん前に進む感覚は、嬉しいけれどしんどくて、時々立ち止まりたくなる。私にとってそれはグループ結成時、そして今なんだろう。
『……気持ちいい風やね』
正「な、」
『あ〜……帰りたくないかも！』
正「ははっ、それは光栄やわ」
今日を境に全てが変わってしまうような気がして、ちょっと怖かったんだと思う。
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