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貴方.
正「うわぁ……これは痛々しいな。よぉ耐えたわ、こんな怪我して」
嫌な顔ひとつせず私を運んでくれた正門くんは、医務室のベッドに私を座らせると、自身の膝に私の足を乗せ、丁寧にテーピングを巻いてくれる。……何やこの少女漫画みたいなシチュエーション。お姫様抱っこも正直びっくりしたけど、全部があっという間に過ぎ去って、まるで他人事みたいやった。
すれ違うジュニア全員に揶揄われて、ちびっ子たちには気を遣われ……そっちの方が恥ずかしかったかも。もう小島みたいに「ダッサ！」て言うてくれた方が良かった……
正「……何か新鮮やったわ。A、いっつも冷静やからさ。あんなに照れたりできるんやな？」
『普通照れるやろ、お姫様抱っこやで……？』
正「ん〜？こんなん慣れてると思ってた、」
『慣れてる？どこで慣れるんよこんなの』
正「……こじけんが言うててん、Aはモテるんやでって」
『へ……小島が？』
手当てを終えた正門くんが、私の隣に腰をおろす。彼が用意してくれた氷嚢のおかげで、じんじんと熱を持っていた足首が冷やされ、今はとても落ち着いてきた。氷嚢がずれないように膝を抱えて座っていると、正門くんは少し汗で濡れた前髪をかき上げる。
正「俺さ、それ言われたとき��もうAも子供やないんやな〜��って、ちょっとショックやってんなあ」
『……何でそんなんでショック受けるん？』
正「ええ……何でやろな？」
正門くんは、ハッキリ言ってずるい。
私が期待してしまうようなことを簡単に言うし、そういうときに限って照れたりしない。ただ真っ直ぐに私を見て、試すような瞳で笑いかけてくる。何年一緒におっても、お腹の底が見えへん人というか……嫌な感じとかじゃないけど、いつも私ばっかりドキドキさせられている。
『……私やって、もう20歳やし』
正「おん、せやね」
『立派な大人やけど……お姫様抱っこは、初めてやったもん』
正「……へえ、」
『お父さん以外やけどな！』
照れ隠しのつもりで言った一言に、正門くんは顔をくしゃくしゃにさせて笑う。そらそうやろ、女の子が初めてお姫様抱っこしてもらうのなんて、大抵がお父さんなんやから。
正「あ〜……ほんまにかわええんやから、もぉ」
『子供扱いせんといて！』
正「ちゃうちゃう、大人の女の子として見てるで？」
『……嘘っぽいなあ』
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