19. 安堵 ページ19
貴方.
『も、無理……歩かれへん、』
冷や汗の量がピークに達する。足の震えが治らなくて、壁に背中を預けるように、ゆっくりとその場に座り込んだ。そんな姿を見て、大ちゃんはすぐに理解したのか、「足やんな？どこら辺が痛む？」と私の顔を覗き込む。
『足首……多分捻って、それで、』
大「分かった、すぐ医務室行くで」
『うん、ごめん……でも何で分かったん？』
大「後半始まる前にやたら正門と話してたやろ？何かおかしいなと思って、正門のこと問い詰めてん」
「何で俺にまで隠すんよ」と寂しそうな顔をした大ちゃんに、とりあえずもう一度謝っておく。怒っているわけではないのか、優しく笑って私の頭を撫でた。
ちゃんと落ち着いてからなら立てるはず、そう伝えてもう少し待ってもらおうとしたけれど……バタバタと騒がしい音がして、私の目の前には、もう既にジャージに着替えた正門くんがやって来た。
大「もう歩かれへんのやって。相当腫れとるかもしれへん」
正「分かった、連れてって平気よな？なにわの方行かんでええ？」
大「皆には俺から説明しとくし、後はもう正門に任せるわ」
『……え？』
大ちゃんは私から離れたかと思えば、正門くんへバトンタッチ。状況が上手く飲み込めない私を見て、彼はおかしそうに笑った。そして座り込んだままの私と視線を合わせるようにしゃがみ込むと、「よぉ頑張ったな」と微笑む。
『いや、そんな……ほんまに夢中やったというか、』
正「偉いで、最後まで隠して。でも明日からも公演あるし、はよ手当てせなあかんな」
『あ、うん、そやね……？』
正「医務室まで運ぶから、ちゃんと掴まっといてな」
「乗れる？」と私に背中を向けた正門くん。
……え？思わずそんな素っ頓狂な声が出そうになったけれど、この期に及んでそれは恥ずかしいから精一杯我慢した。好きな人におんぶされるなんて、どんなシチュエーションやねん。いや、嬉しい……のかもしれへんけど、そんなん緊張が勝るに決まってるし。
正「A？……あ、乗るまでがしんどいか。しゃあないからじっとしとき、動いたら落ちるから」
『え、あ、待って……っひい！』
すぐに切り替えた正門くんは、私を軽々と抱き上げて「そんな簡単に落としたりせんよ」と笑った。
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