13. 重圧 ページ13
貴方.
「A！もっと笑顔！そんな硬い表情で踊る曲ちゃうで！」
『……はい！すみません！』
グループ結成を知らされて、あっという間にやって来るお披露目の日。もう稽古も残り僅かだと言うのに、振付師さんから褒められたことは一度もなかった。
振りや歌は完璧に入っているのに、どうしても上手く笑えない。目の前にお客さんがいることをイメージした途端に、表情が引き攣っていくのを感じた。そうなってしまうともうダメで、足が震えてくるし、目線も泳ぎがちになる。
グループとして初めてのオリジナル曲。つまりは私にとっても初めてのセンター曲で、嬉しさと同時に、その倍の不安も感じている。
「このグループええな、ってちゃんと思ってもらえるようにせなあかんねんで。教科書通りにやれたらええってわけちゃうよ」
『……はい、すみません』
「うん、一旦休憩しよか。10分後に再開するから」
ピリついていた空気から解放されるように、皆が口々に話し始める。もちろん他のジュニアたちも出る公演だから、私たちのレッスン中は静かに見守ってくれていた。何を言うでもなく、毎日色んな人から「頑張ってね」と言ってもらえることが多く、本当に優しい人たちの集まりなんだなあと胸が温かくなる。
……とは言え、私が足を引っ張っているのは紛れもない事実で。とても抱えきれないほどの期待をしてもらって、プレッシャーを感じているのだろうか。こんなの生まれて初めてで、何も分からない。
流「……Aちゃん、ちゃんと水飲んだ方が良いですよ」
『あ、流星くん……ごめんなあ。ありがと、』
流「ううん、そんなん全然」
大ちゃんとずっと一緒にいる、3歳も歳下の流星くん。まだ高校生なのに「アイドルとはこういうもの」っていうのを理解してる、って言うんかな……ステージに立つ彼はいつもキラキラしていて、私もこうなりたいと強く思わされる。情けない話やけど、なにわ男子は私以外皆そんな感じ。
皆が持って生まれたであろう輝きに、私はとても太刀打ちできない。
『……あっかんなあ。ダサすぎる、私』
流「え？」
『今更怖いとか言うてる場合ちゃうのに……』
あの日、本当にこの先何年分かの涙は流し切ったから、もう泣かないけれど。不安な気持ちと、怖くてたまらない気持ちと、それでも悔しい気持ちが、ぐちゃぐちゃと混ざり合う。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 614人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「Aぇ!group」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
