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貴方.
「……前にさ、ほんとに好きじゃない人とキスって出来るのかとか、色々話したじゃん」
私の後頭部に手を添えたまま、穏やかな口調でそう続ける涼介くん。何も言えずにただ肯定の意味を込めて頷くと、彼は柔らかな笑みを浮かべた。
「俺はAのことが好きだから触れたいと思うし、キスだってしたくなるよ。……現に今、したでしょ?」
『……うん、』
「好きだよ、本当に。心の底から」
信じてくれ、とでも言いたげなほど、懇願するように見つめられる。酷い嘘を吐くような人ではないことは、もう痛いほど分かっていた。……けれど、そうじゃなくて。涼介くんが伝えてくれる好意が本物かどうかが争点なわけではない。
私は、飽くまでも偽装彼女として、彼のそばにいることを許されている。本当に恋をして、周りが見えなくなって、彼の仕事に影響を与えてしまったら?
『……あり、がとう、うれしい、』
「……本当に?無理させてるんじゃないかな、俺」
『違う、そんなわけない!……そんなんじゃないの、本当に』
「A……」
たくさんの人を幸せにしている涼介くんを見て、怖くなった。私が自分のために彼のそばにいることを選んだとして、それによって傷付く人は数えきれないほど存在する。アイドルだって人間だというのは事実だけれど、第三者である私がそれを貫き通すというのはお門違いだとも思った。
今日出会ったたくさんのファンから、山田涼介という人間を奪うような感覚。罪悪感とか、自己嫌悪とか……何とも言えない感情に押し潰されそうになる。
『……これ以上好きになって、別れるのが苦しくなるのは、つらいの、』
きっと私たちの関係は永遠じゃない。終わりが来るものだから。世間一般のカップルのようにはなれないし、確実な未来の約束など出来るわけがない。それさえも含めて涼介くんが好きだと、このまま時間が許す限りそばにいたいと、そう思い込むこともできる。けれど、
人というものは想像の何倍も脆いもので。今後何かあったとき、傷付くのは恐らく涼介くんだ。私のせいで辛い思いなんてさせたくない。
『すきだよ、……私も、涼介くんのこと、』
涙がこんなに願っても止まってくれないものだなんて、生まれて初めて知った。
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ひろ(プロフ) - はじめまして!流星さんの書くお話大方読ませていただいております!全て面白くて大好きなのですが、中でもこのお話が甘くてキュンとして大好きです!沢山いつもありがとうございます(,,> <,,)無理せず体調面などお気をつけてお過ごしくださいね (2023年2月3日 3時) (レス) id: eca626ebab (このIDを非表示/違反報告)
流星(プロフ) - 華名嘉さん» 華名嘉さん、はじめまして!コメントありがとうございます。私の話でキュンキュンしていただけるなんて光栄です( ; ; )お気遣いありがとうございます!これからものんびりなペースだとは思いますが、よろしくお願いいたします! (2022年1月13日 18時) (レス) id: e764027ef8 (このIDを非表示/違反報告)
華名嘉 - はじめまして!読んでいてとてもキュンキュンしています!!!無理せず、更新頑張ってください! (2022年1月8日 11時) (レス) @page28 id: df2eb067ab (このIDを非表示/違反報告)
流星(プロフ) - めもりさん» めもりさん、はじめまして!コメントありがとうございます。やりすぎかな?と不安になるくらい意識して甘く書いていたので、そう言ってもらえると嬉しいです( ; ; )これからもよろしくお願いいたします! (2021年12月8日 0時) (レス) id: e764027ef8 (このIDを非表示/違反報告)
めもり(プロフ) - はじめまして!流星さんの描く山田くんが優しくて甘くてすごく好きです…!更新毎回楽しみにしていますっ! (2021年12月6日 1時) (レス) @page8 id: 1ebe0deea6 (このIDを非表示/違反報告)
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