勿忘草 (ページ39)

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『A、今日ぼーっとしてるね？』

海にそう言われたのは、海の家でくつろいでる時。

「え…そうかな」

『うん、いつもの元気どこいったって感じ』

「はは…」

だって、今まで通りいれるわけない。

あんな手紙読んじゃったら、色々探っちゃうに決まってる。

まだ私の事好きなのかもって、期待しちゃうに決まってる。

『俺で良かったら話聞くけど？』

そう言って隣に座ってきて、1度触れるだけのキスをされる。

『…どうしたの？』

「……」

言えるわけない。

言えるわけないけど、何かあることは勘づいてる。

ということは、何かを言わなくちゃいけないわけで…

海は、拓弥みたいに逃げ道を作ってくれないから。

『…そんな見ないでよ』

「え」

次の瞬間には、ソファに押し倒されてさっきとは真反対のキスをしてきた。

違う。

こんなの求めてるんじゃない。

「や…めて…」

『………ごめん』

初めて発したキスに対する否定に、海は素直に私の上から退いた。

『…Aはさ、…なんでこの話乗ったの？』

私のことは見ずに、静かに響いたその質問に、頭をフルに回転させて考えた。

この話。
たぶん、浮気のこと。

なんでこの話に乗ったのか。

その答えは、私が1番知りたかった。

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