プレゼントふろーむ姉御 ページ8
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「いらっしゃいませ」
私たちが最初に向かったのは、旅館だった。
何故1ミリたりとも町を観光していないのに、いきなり旅館なのかと言えば、理由は分からないが、姉御からそうするよう、お達しがあったからである。
「えっと、志村妙さんが予約してると思うんですけど…」
「はい、承っております。では、こちらへ」
私が姉御の名を出すと、女将さんの合図で後ろから沢山の仲居さんが出てきた。
そして彼女らは何故か私たちを取り囲む。
「……え?えっ……?」
「こちらです〜」
「…俺もなの?」
「ええ、もちろん」
それから、何故だか私も神威も、彼女らに押されるまま、それぞれ奥の部屋へと押し込まれ。
あれやこれやと言う間に着ていた服を引っペがされ、代わりに別のものを着せられる。
さらに、畳の上に座らされ、勝手に髪が結われていく。
「…ほら、ようお似合いですよ」
「…え、えぇ……?」
鏡の前に連れて行かれて、私は自分自身の姿を映す。
するとそこにはーー
「…き、着物……?」
淡い藤色の下地に、薄紅色の桜の花があしらわれた、綺麗な着物。それを着た自分が映っていた。
「こちらへ。旦那様もお待ちです」
「遅いよ」
「…か、神威…?」
慣れない着物で腕を引かれるまま、先程の場所まで戻って来ると、既に神威は戻って来ていた。
…但し、神威も服装は変わっていて。
普段は黒いチャイナ服だけれど、今は縦縞模様の赤い着流しを着ていた。
長い髪を纏める髪紐も、奴の瞳と同じ青いリボンになっている。
「…これ、神威が頼んだの?」
「そんな訳無いだろ。俺がわざわざこんな動きにくい格好になると思う?」
「だよね。じゃあこれって……」
服装より何より、気になるのはそこだ。
神威が頼んだ訳ではないし、当然私でもない。
…と、なると。
「これはご予約の志村様からのお申し付けですよ。お代金も其方から頂いております」
「…え、」
姉御が?
それもお金まで払ってくれているなんて。
チケットを譲って貰っただけでも、十分過ぎるくらいだったのに、益々有り難さを通り越して本当に申し訳ない。
最初に旅館に寄れというのはこういう事だったのか。
「そしたら、今から京の町をゆっくり楽しんでおくれやす」
「は、はい…」
なんて納得しているうちに、女将さんの勢いに押されて私と神威は、再び旅館の外へと出てきてしまった。
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頑張ってください - ああああああああ久々に読んだら進んでてまた神威熱が… (2020年1月6日 1時) (レス) id: ac6d87c707 (このIDを非表示/違反報告)
自己満者 - 京篇凄い良くて、泣いちゃいました(笑)更新頑張って下さい! (2019年8月17日 15時) (レス) id: c6b3012422 (このIDを非表示/違反報告)
陽奈(プロフ) - むくさん» コメントありがとうございます。時間をかけて丁寧に書いたシーンなのでそう言っていただけるととても光栄です!これからもよろしくお願い致します。 (2019年5月26日 23時) (レス) id: 765bdcb728 (このIDを非表示/違反報告)
むく(プロフ) - 求婚シーンめっちゃ好きです〜!! (2019年5月25日 23時) (レス) id: 3bb4d6b7d5 (このIDを非表示/違反報告)
陽奈(プロフ) - 匿名さん» 初めまして!そう言っていただけてとても嬉しいです。神威くんのイケメン台詞は割と心の声の方が潜んでいたりします笑これからもよろしくお願いします!コメントありがとうございました! (2019年4月29日 20時) (レス) id: d60993068d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:陽奈 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ryosukehar1/
作成日時:2019年1月8日 17時