狡い男 ページ11
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「……あ、」
そんなこんなで、色々な店で食べ物を物色しながら歩いていると。
私は、少し前の店先に、とある物を見つけて、立ち止まる。手を繋いでいるので、当然神威もそれに釣られて止まることとなった。
「何?なんかあるの…?」
「…いや、アレ……綺麗だなと思って」
「何アレ……簪?」
…そう、簪だ。
店先に並べられた、色鮮やかな沢山の簪。昼間の太陽の光を受けて、美しく輝いていた。
その美しさに何も言えないでいると、神威は何故か黙りこんで、じっとこちらを見ている。
「……何、じっと見たりして」
「いや、Aってこういうのに興味あるんだと思ってさ。初めて知ったよ」
「…どうせ、私なんかにはこんな煌びやかなもの似合わないわよ。それくらい、分かってるっての」
神威がそんなつもりで言ったんじゃない事も、分かってるけど。分かっているけれど、それでも心の中のモヤがどうにも出来なくて、唇を尖らせてしまう。
案の定、神威は「別にそこまでは言ってないだろ」と少々眉を顰める。
本当に、素直じゃないし、鈍感だしで、とことん私はポンコツだ。そうして、私が自己嫌悪に陥っていると。
「……これとか、普通に似合うと思うけど?」
「…っな、はぁ!?」
いつの間にか、神威がその中の一つを手に取っていて。それを、私の髪の辺りに翳していた。
真正面から、青い瞳が私の姿を映していて、その表情はとてもからかっているようには見えない。トドメは次の奴の言葉だった。
「Aって結構髪さらさらで綺麗だったし。良いんじゃない?簪」
そんな言葉を、口元に優しい笑みを浮かべて言うものだから。いつもは貼り付けたみたいな、冷たい笑顔ばかりで、へらへらしている癖に。
こういう時は、こんな顔をするんだから。……此奴は、本当に。
「(…何て、狡い男なの……)」
こんなの、ずっと一生耐え続けるなんて、不可能だ。随分前から、少しずつ悟っては居たけれど。
今この瞬間、それが明確になった。
「……い、いいの、別に。買っても付けられないし。ほら、さっさと次!食べるんでしょ」
だけど、今はまだそれを神威にぶつける訳にはいかない。総悟の事を、何も解決出来ていないのだから。ずっと隣で支えてくれた総悟に、ちゃんと向き合わなくちゃいけない。
だから、私はできるだけいつも通り、神威を急かし、歩き始めた。
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頑張ってください - ああああああああ久々に読んだら進んでてまた神威熱が… (2020年1月6日 1時) (レス) id: ac6d87c707 (このIDを非表示/違反報告)
自己満者 - 京篇凄い良くて、泣いちゃいました(笑)更新頑張って下さい! (2019年8月17日 15時) (レス) id: c6b3012422 (このIDを非表示/違反報告)
陽奈(プロフ) - むくさん» コメントありがとうございます。時間をかけて丁寧に書いたシーンなのでそう言っていただけるととても光栄です!これからもよろしくお願い致します。 (2019年5月26日 23時) (レス) id: 765bdcb728 (このIDを非表示/違反報告)
むく(プロフ) - 求婚シーンめっちゃ好きです〜!! (2019年5月25日 23時) (レス) id: 3bb4d6b7d5 (このIDを非表示/違反報告)
陽奈(プロフ) - 匿名さん» 初めまして!そう言っていただけてとても嬉しいです。神威くんのイケメン台詞は割と心の声の方が潜んでいたりします笑これからもよろしくお願いします!コメントありがとうございました! (2019年4月29日 20時) (レス) id: d60993068d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:陽奈 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ryosukehar1/
作成日時:2019年1月8日 17時