♯ ページ21
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前を向く勇気。私にはそれがなかった。前を向けば琴葉をないがしろにしてしまう。忘れてしまうかもしれない。それが何よりも怖かった。
でも今日、亮やトシキくん達のおかげでやっと前を向ける気がした。
「……ねえ、亮」
「ん?」
帰り道、亮と手を繋いで帰る。
「実家帰ったらさ、一緒にアルバム見ようや」
「アルバム?」
琴葉の人生は16年前で途絶えてしまった。でも16年前確かに彼女は生きていた。彼女が動かした時の流れを地元の友達以外にも知ってほしい。私達が双子やった事実を亮にも知ってほしいと思えた。
自分の中で壊れてしまった時計は時を経て丁寧に修繕され、再び動き始めた。
「琴葉と私のちっちゃい時のアルバム」
一卵性双生児のよく似た双子。両親すらも見分けられないことがあるくらいそっくりだった。私も時々見返すとどっちが自分なのか混乱する。
皆を混乱に巻き込んだ私達を、亮は見分けられるかな。
「見てみたい。どれだけそっくりだったのか見てみたい」
「多分見分けられへんよ?」
煽ったわけじゃなかった。事実として報告しただけやった。でも亮はムッとする。
「そんなの分からんやん……」
「えっ」
「ぜってえ当ててやる」
「えっ……」
「俺がどれだけAの特徴を捉えてるのか知らんよね。えっちの時にどんだけ顔見てるか知らんよね」
「ねえ待って、めっちゃ恥ずいんやけど……」
……どうやら私、謎のスイッチを押してしまったみたいだ。頭にファラオのネメスを被った男に闘志を燃やされると高身長の威圧感も相まって、さすがに怖い。
「俺がAを見分けられたら、何してもらおっかなあ」
負けず嫌いに火を付けた以上、心して挑むしかないよね……
こっちゃん、私はこんな旦那さんと一緒に過ごしてます。これからの人生も一緒に過ごしていくつもりです。
悪い笑顔で私を見下ろすファラオに一抹の恐怖を覚えながらも、16年目にして初めて心から笑えた命日を嬉しく思った。
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「嘘やん……、何で分かったん……?」
「さっきも言ったけどえっちの時にAの顔を沢山見てるから?」
「平気でそないなこと言わんといて!」
「だって感じてるA可愛いもん」
「変態……」
イケメンなのに、たまに変態でいじわる。
……でも、そんな彼に出会わせてありがとう。
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みゆし(プロフ) - 最近読ませて頂いてます!パスコードを教えて欲しいです🙇♀️これからも素敵なお話楽しみにしてます (2月11日 11時) (レス) @page40 id: b2f1dffa53 (このIDを非表示/違反報告)
rioyamakawa(プロフ) - この小説の更新待っています! (2019年12月14日 1時) (レス) id: faed70be53 (このIDを非表示/違反報告)
あおやなぎ(プロフ) - rioyamakawaさん» ありがとうございます(;;) これからも頑張ります〜! (2019年7月23日 10時) (レス) id: c05e59e944 (このIDを非表示/違反報告)
rioyamakawa(プロフ) - この小説占ツクの中で1番好きです!!これからも更新楽しみにしています!!! (2019年7月17日 11時) (レス) id: faed70be53 (このIDを非表示/違反報告)
あおやなぎ(プロフ) - たむさん» ありがとうございます(;;) これからも頑張ります!!! (2019年6月30日 23時) (レス) id: c05e59e944 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あおやなぎ | 作成日時:2019年6月27日 22時