青空の愛 ページ15
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東京での仕事が始まる前、最後の連休。この機会を逃すまいと地元に帰省した。
「あー、帰ってきたわー!」
頭上に広がる青空と太陽はジリジリと体力を奪う。
「こら、声でかい」
「痛っ、眩しっ」
そんな中でバシッ、と頭を叩くのはファラオ。最近やっとアラブの石油王を卒業し、ちゃんとしたコスチュームを手に入れた。それはいいんだけど……、力加減分かってへん上に頭が日光に照らされて輝きすぎている。
愛知で2度見されるんやから、大阪じゃ当たり前にびっくりされるもんで。騒ぎにならんように待ちぼうけのタクシーを呼ぶ。
「お兄さんなんちゅう格好してんねん!?」
もちろんタクシーの運転手のおっちゃんにもビックリされた。こんな人、ハロウィンにならんとなかなかおらんもん。気持ちは察する。
「おっちゃんごめんな、このお兄さん、ここまで連れて行ってくれへん?」
「えっ」
おっちゃんに実家の住所が書かれた紙を渡す。
「分かった!」
「よろしくお願いします! 亮、またあとでな!」
「え、待って」
亮の言葉届かず、自動ドアはパタンと閉まる。そのままエンジンをふかしてタクシーはターミナルを出発した。
「……よし」
亮を見送ってすぐ、私は近くの花屋さんに立ち寄る。
「すんませーん」
一緒に実家に向かわなかったのにはもちろん理由がある。ファラオと帰るのが恥ずかしいとか、そんな単純なものではない。
本当は一緒に行くことを考えた。でもやっぱりできない。" あの子 "には私と実家の家族の特別でいてほしい。
「あの、お墓参り用の花束作ってもらいたいんですけど……」
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「琴葉、帰ってきたでー」
実家近くの墓地。1番奥を陣取る坂元家の墓には、東海オンエアすらも知らない私の片割れが眠っている。
夏休み中に突然の事故で亡くなってからもう16年。命日となった今日、どうしてもこっちゃんに会いたくて秘密で来てしまった。
「こっちゃん、元気? 私めっちゃ元気よ!」
掃除をしながら墓石に向かって独り言を呟くなんて、パッと見怪しい人かもしれん。でもこの時間がとてつもなく愛おしい。去年のお盆以来、久しぶりに会えたんやもん。
「大好きなお花、持ってきたからなあ」
花立に水を入れ、ひまわりの花束を差す。青空の下、ありがとう、とこっちゃんの声が聞こえた気がした。
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みゆし(プロフ) - 最近読ませて頂いてます!パスコードを教えて欲しいです🙇♀️これからも素敵なお話楽しみにしてます (2月11日 11時) (レス) @page40 id: b2f1dffa53 (このIDを非表示/違反報告)
rioyamakawa(プロフ) - この小説の更新待っています! (2019年12月14日 1時) (レス) id: faed70be53 (このIDを非表示/違反報告)
あおやなぎ(プロフ) - rioyamakawaさん» ありがとうございます(;;) これからも頑張ります〜! (2019年7月23日 10時) (レス) id: c05e59e944 (このIDを非表示/違反報告)
rioyamakawa(プロフ) - この小説占ツクの中で1番好きです!!これからも更新楽しみにしています!!! (2019年7月17日 11時) (レス) id: faed70be53 (このIDを非表示/違反報告)
あおやなぎ(プロフ) - たむさん» ありがとうございます(;;) これからも頑張ります!!! (2019年6月30日 23時) (レス) id: c05e59e944 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あおやなぎ | 作成日時:2019年6月27日 22時