【男主】涙でにじむ約束は Ⅱ (ページ3)

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自分に厳しい人だからページ3

向井side

稽古からの帰り道。

藤原「めちゃくちゃいい人やったな」

話に上がったのは、Aくんのことやった。

末澤「俺勝手に、もっと壁作ってくる人やと
思ってたわ」

向井「分かる。あんな気さくな感じって
知らんかったわ」

憧れる先輩として、よく名前をあげられてるのも
納得の人やった。

誰もが認めるビジュアルにスタイル、
歌もダンスも演技もめちゃくちゃうまくて、
おまけに性格もいいって……

向井「あぁいう人、天才っていうんやろうなぁ。
うらやましいわ」

そんな一言でAくんのことを片付けた自分を
殴ってやりたくなったんは、
この数日後のことやった。

その日はAくんメインの演目の稽古やった。

バッグについてたのは俺たち関ジュ。

何回も何回も通してたけど、
誰かがうまくできれば、別の誰かが
ミスをする。

そんな連続やった。

時間が経つにつれて空気もだんだん重くなって
そのプレッシャーでまたミスをする。

向井「すみません！俺間違えました！」

頭では分かってんのに、
体の動きに結びつけれんくて
何回目かのときに俺もミスをした。

A「ドンマイ！今の惜しかったよ！」

少し離れたとこから聞こえてきたのは
Aくんの声やった。

俺だけじゃなくて、誰かがミスをしたら、
自然にフォローに入ってた。

Aくんもレッスン着の色が変わるくらいに
汗だくで、自分も相当しんどいはずやのに
ずっと周りのことを気遣ってくれてた。

Aくんがおらんかったら、
あの雰囲気はもっと最悪なものになってた
と思う。

滝沢「もう１回初めから！」

全員「はい！」

最初の立ち位置に戻る途中、
Aくんのとこに駆け寄ってきた照兄が
すぐ隣を通った。

そのとき小さく聞こえてきた会話が
ひっかかった。

岩本「A、あんま無理すんな。
今日ぐらい自分のことだけ考えてたらいいから」

A「ありがと。でも大丈夫だよ。
みんなも頑張ってるんだし」

岩本「状況が違うだろ」

状況……？

なんの話してるんやろう。