演技は得意 ページ38
Aside
深澤「あんな大量の検査、
なんで受けた？」
一瞬、息をするのも忘れてしまった。
なんで、知ってるんだよ。
どこで漏れた？
どこまで知ってる？
まさか、病気の顛末のことまで
知ってるんじゃないか。
けど、なんで……
いろんな考えが、頭の中を
駆け巡った。
けどその理由は
簡単なものだった。
深澤「ごめん、さっきカバン見たときに
病院の領収書見ちゃってさ。
見るつもりなかったんだけど」
A「……あぁ、それでか」
正直、ほっとしている自分がいた。
まだ、何も知られてないんだって。
今までと同じでいられるんだって。
A「別にいいよ。
そもそもカバン開けてもらうように
頼んだの俺だし」
何にも気にしてないように
ふっかの目を見て言った。
不安をにじませるふっかの目。
それでも俺から何かを探りとろうと
しているのが読めた。
けど、ごめんな、ふっか。
悪いけど、俺、演技得意なんだわ。
A「あれは念のための検査。
クリニックじゃできないこともあるから
大きな病院に紹介されて、
一通りの検査受けただけだよ」
そう言って、笑ってみせた。
深澤「それで？ 結果は？」
あと１年ぐらいで死ぬかもってさ。
なんて言ったら、楽になるんだろうか。
A「ふっ」
言えるわけないじゃん。
こうなったら、隠し切れるとこまで
隠してやろうか。
深澤「何笑ってんだよ」
A「ふっかの顔が怖すぎんだよ」
深澤「はぁ？」
A「大丈夫だよ。そんな顔しなくても」
何が大丈夫なのかも分からないけど
そう言って立ち上がった。
薬が効いたのか、めまいは治まって
頭痛もかなり引いていた。
A「ごめんな、ふっかの休憩時間
取っちゃって。楽屋戻ろう」
深澤「え、ちょっと待てって！」
ふっかに顔を見られないように
俺は数歩前を歩いた。
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作者名：くらげ
| 作成日時：2021年9月20日 5時
