演技は得意 ページ37
深澤side
見間違い、じゃないよな。
カバンの中にはポケットがいくつかあって、
初めに見た場所には薬はなかった。
けど、その代わりに
領収書が見えた。
そこには検査のような項目が、
ぎっしり書かれていた。
１番下に書かれた病院名は
この辺りでも有名な大きい病院の名前だった。
なんとも言えない胸騒ぎを抱えながら
Aの元へ戻った。
深澤「A、大丈夫か？」
目を閉じたままうつむいているAに
声をかけた。
深澤「お待たせ、これで合ってる？」
A「うん、ありがとう」
顔をあげて薬とペットボトルを
受け取ったA。
触れた手は、血が通っていないみたいに
冷たかった。
A「はぁ、本当さっきはごめん」
薬を流し込んだAが
ため息をつきながら言った。
深澤「え？」
A「見てて気持ちいいもんではないだろ」
あぁ、吐いたことか。
深澤「そんなん今さら気にする関係でも
ないだろ」
A「かーっこいい」
深澤「茶化してんじゃねぇよ」
しんどさのピークは越えたのか、
Aの顔に色が戻ってきていた。
そのことに少し安心したからか、
頭に浮かんできたのは
さっき見た領収書の文字。
勝手に見てしまったことに、
少しの罪悪感はあったけど
半分事故のようなものだ。
このままもやもやするくらいなら、
ぶつけてしまった方がよっぽどいい気がした。
深澤「A」
A「ん？」
深澤「１個聞いていいか？」
A「なに？」
深澤「あんな大量の検査、
なんで受けた？」
ペットボトルを手の中で転がしていたAの
動きが、ピタリと止まった。
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作者名：くらげ
| 作成日時：2021年9月20日 5時
