胸騒ぎ ページ34
深澤side
楽屋に戻るように指示された後
Aに声をかけた。
けど声をかけた瞬間、
逃げるようにトイレに行ってくるとだけ
言い残して俺の前から去った。
付き合いが長いから分かる。
きっと、そっとしておいてほしいんだろう。
けど、あの顔色を見てほっておくなんて
さすがにできない。
みんなに気づかれないように楽屋から
抜け出して、１番近いトイレに向かった。
A「つっ、げほっごほっ」
入ってすぐ、個室の中からえずく音が
聞こえてきた。
深澤「え……」
吐くほど具合悪かったの……？
深澤「A、いる？」
Aなのは分かっていたけど、
一応確認した。
A「ふっ、か……？」
かすれたAの声だった。
深澤「そうだよ。大丈夫？」
A「大丈夫……すぐ戻る」
中から水を流す音が聞こえてきた。
Aが出てくるのを待っていたときだった。
中から、バタンッ！と派手な音がした。
深澤「A！！」
まさか、倒れたんじゃ……
嫌な想像をしてしまってすぐ、扉が開いた。
A「ごめん、びっくりした？
ちょっと中でバランス崩して」
そう言いながら出てきたAの顔色は
さっき見たときよりも
より白くなっている気がした。
深澤「大丈夫じゃないでしょ。
顔色、めちゃくちゃ悪いし、
それに、今吐いたんじゃないの？」
A「……まだ本調子じゃないみたい」
困ったように笑いながら、
Aは口をゆすいだ。
そんな次元じゃないだろ。
あまりにも無理しすぎだと思って、
さすがに注意しようと思ったときだった。
A「……先、戻ってて」
深澤「え？」
A「いい、からっ……」
そう言って、Aは口を押さえながら
個室に戻った。
A「うっ、げほっごほっ、つっ、
はぁっ……」
深澤「……全然大丈夫じゃないじゃん」
扉を閉める余裕もなかったみたいで
激しく戻すAの背中をさすった。
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作者名：くらげ
| 作成日時：2021年9月20日 5時
