1枚のメモ ページ12
Aside
『岩手の神童＿＿？』
「…へ？」
大谷君の唇から紡がれた単語に思わず呼吸を忘れた。久しぶりに聞いた単語だった。大谷君にじゃなくて、自分に向けられるそれは何年ぶりだろうか。
「なん、で、」
『あの、宮野A？フィギュアスケートの？』
まさか。どうしてあの大谷翔平が私のことを知っているんだろう。しかも10数年も前に競技をやめた私のことなんて。
「どうして、そのこと。」
『やっぱりそうなの？』
大谷君は確かめるように私の目を見て訴えた。凄く安心したような、でも少しさみしそうな泣きそうな顔だった。
「はい、私、確かにスケートやってました。」
『そうだったんだ。そうか、君だったんだね。俺、実は宮野さんの演技見たことがあるんだ。16年前、岩手のスケートリンクであった県予選、母と見に行って。』
「え…、」
すぐに思い出せた。多分全国に行く前の大会だ。初めてアクセルジャンプを人前で飛んだあの試合。普段はあまり盛り上がったりしないお父さんがいつもの数倍飛び跳ねて喜んでくれた時の。言葉が出てこなかった。
赤だった信号が青に変わって、大谷さんは前に向き直ってアクセルをゆっくりと踏んだ。
『俺、宮野さんのファンでした。』
大谷君の一言に、私はびっくりして彼の横顔を見た。少し照れくさそうに下がった目尻にちょっと涙が浮かんでいて、私はもっと驚いた。
『あの時みた君の演技、本当に凄かった。ルールとか技術的な事は良く分からなかったけど、こんなに美しく踊る人が、スポーツできる人がいるんだって思って、俺、感動したんだ。6歳も年下の女の子に夢中になったりして当時はちょっと自分でもびっくりだったけどさ。俺ずっと前に、宮野さんから元気貰ってたんだな、へへ、なんか嬉しいな。』
「大谷さん、なんで泣いて…」
『本当にごめん、俺、君が震災で遠くに行っちゃったんだと思い込んでて、ショックで、考えるのやめちゃってて、今更、思い出して、なんか宮野さんがここにいるの凄く不思議で、嬉しい。』
涙を流す大谷君につられて私も泣けてきた。色々なことがあったけど、一人の時と違って彼の言葉についてきた私の思い出はどれも素敵なものばかりだった。心から滑ることを楽しんでいたあの時。リンクサイドから手を振るお父さんとお母さん。ずっと、ああいう毎日が続くんだと思ってた。
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みび - 続きが気になります！ (9月8日 23時) (
レス) id: 4e8c4ab155 (このIDを非表示/違反報告)
るう(プロフ) - miya381117さん» コメントありがとうございます！頑張ります！ (6月4日 16時) (レス) @page30 id: dfa5704a4e (このIDを非表示/違反報告)
miya381117(プロフ) - 続きが気になりすぎて眠れない^ ^翔平行けー！ (6月1日 21時) (レス) @page29 id: e8bd8eef5b (このIDを非表示/違反報告)
るう(プロフ) - 桐山めぐさん» コメントありがとうございます！そう言っていただけてすごくうれしいです！！投稿頑張ります！ (6月1日 17時) (レス) @page29 id: dfa5704a4e (このIDを非表示/違反報告)
桐山めぐ(プロフ) - こんにちは！このお話めちゃくちゃ面白いです♪大谷さん 主人公ちゃんに連絡出来ない日々を耐えてやっと会えると思ったのに、、主人公ちゃんに何もありませんように祈ります(T_T)続きも楽しみにしてます！応援してます♪♪ (6月1日 17時) (レス) @page29 id: bb3023c008 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：るう | 作成日時：2023年5月26日 15時
