始まりはEndRoleから (ページ4)

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Ep3「無稽のFugue」ページ4

オベロンの冗談は少しわかりづらい。
本気なのか冗談なのか、それとも両方なのか。
優しそうな笑みを浮かべて話す彼は親切そうであり、どこか怖い。

「お気持ちだけで大丈夫です。この近くに交番か警察署はありますか？」

「あるよ、案内しようかい？」

「っはい！お願いします！」

オベロンの案内で近くの警察署へと向かった。
警察署の窓口で事情を説明したらまずは個人情報を記入するよう数枚の書類を渡される。
しかし、渡された書類はやはり読むことのできない記号の羅列だった。

「あぁ、ここに名前、こっちに住所だね」

私がペンを進めないことに気づいたのか、オベロンが背後から何を書くのか欄をなぞり教えてくれる。

「ありがとうございます。あと、これって文字って日本語で大丈夫でしょうか？」

「ニホンゴ？どうかな、一度書いてみてくれるかい？」

そういわれて名前を書く欄に書き入れる。

「A...それが君の名前かい？」

「はい、でもどうして...」

「この書類に使われているのはハンター文字、キミが使っているのはジャポンの文字だね」

「ジャポン...」

響きが「ニッポン」に似ているけれど関係があるのだろうか。
それにハンター文字。
そんな文字は聞いたことがないはずだが、どうにも頭の奥で掠めるものがある。
気になるけれど今はこの書類を埋めることが先決だ。
そしてすべて書き入れ提出すると、数分後に呼び出しがかかり署員の方の説明を聞いた。。

「...存在していないってどういう事ですか？」

署員の方によると、私が存在する証が見つからないらしい。
おかげで偽名と疑われたり、「リュウセイガイ」出身ではないかと聞かれた。
そのうえ、いっさいの身分証明ができない以上どうすることもできず、私が成人していることもあり保護施設に送ることもできない。
打ちのめされ警察署を後にする。

「......」

「大丈夫かい？」

項垂れる私にオベロンが心配そうに視線を向ける。
この人に頼りたい。
でもこれ以上見知らずの人に迷惑をかけるわけにはいかない。

「ここまでご迷惑をお掛けしましたっ！ありがとうございましたっ！」

私は言いたいことだけを言ってその場を走り去る。
このまま話を続けたら、一緒にいたら、きっと頼ってしまう。
可哀想な自分であの人の優しさにつけ込んでしまう。
そんなの申し訳ない上、自尊心が納得しない。
だからあの人から私が見えなくなるまで、後戻りできなくなるまで私は夢中で走った。