Ep19「お休みKitty」 ページ20
にこりと微笑むヒソカさん。
その様子から察するに教えてくれる気はないようだ
「そうだ、君に渡したいものがあってね」
「何でしょう？」
「はい、これ」
ヒソカさんから渡されたのは旧型の携帯。
旧型といってもこの世界では一般的らしい。
「試験で使うと思うからちゃんと持っていて」
「試験でですか？」
それはいわゆるカンニングでは...？
少し不安になるが、そういうことではないと言われる。
「わかりました。ありがとうございます、ヒソカさん」
「うん、どういたしまして」
携帯が手元にあるというのは少し落ち着く。
「ヒソカさんには良くしてもらってばかりですね」
彼には返さなければならない恩が増えるばっかりだ。
といっても帰る目処なんて全くない上、もとの世界に戻りたいと言い切れない。
家族には会いたいし戻りたい、しかし同じくらいあの鬱屈とした時間に戻りたくないと思ってしまう。
ヒソカさんに甘やかされて居心地が良くなるほど帰りがたくなっていく。
「A？」
「ぁ...いえ、何でもないです」
「ほんとに？」
ヒソカさんは目敏いから気を付けないと。
僅かでも帰りたくないという気持ちがあることを知ればきっと彼はそれを許してくれる。
そしたら余計帰りたくなくなってしまう。
「えっと、試験内容ってどんなのかなって」
「あぁ、そうだねぇ...実技が多いようだけど筆記もあるって噂がある。まぁその時の試験官の気分次第らしい」
「実技？例えばどんなものですか？」
「それこそ試験官の気分によるね」
それでは過去問対策もなにもない。
「そうですか...」
「ふふっ、大丈夫、僕も一緒にいるから」
「はい。あ、それにイルミさんも参加してるんですよね」
「あ〜...うん」
ヒソカさんも一緒で、イルミさんもいると思うとちょっと安心だ。
そうだ、イルミさん連絡先を聞いたら教えてくれるかな？
「必要がない」とか言われて断られそう。
「楽しそうだね」
「え、そうですか？」
「うん」
言われてみれば確かにそうかもしれないと納得。
それからヒソカさんとの話は夕暮れまで続き、夕食はルームサービスを部屋で一緒にとった。
「じゃぁ、また明日ね」
「はい、お休みなさい」
「お休み」
彼の部屋の入り口で挨拶を交わし、自室に戻ろうとすると腕を引かれる。
「え？」
頬に触れる柔らかい感触。
間近で見る金色の瞳。
「良い夢を」
甘い囁きと共に、目の前の扉がしまった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 121人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：００ | 作成日時：2019年5月25日 12時
