Ep18「仄くSymbol」 ページ19
昼食後、ヒソカさんと約束した通り彼の部屋を訪れた。
ノックをし彼が中へ迎え入れてくれる。
「やぁ、来てくれてありがとう」
「いえ、私も手品を見せていただけるなんて嬉しいです」
私がソファーに座るとヒソカさんが正面へと立った。
彼は手にしたトランプカードをとても器用に扱う。
ふと、出会った時の彼の言葉を思い出した。
「ボクはヒソカ、奇術師さ」と彼は言っていたが、改めて納得した。
「さて、まずはカードを、と、おや？カードが消えてしまったね」
「え？あ、え？！」
ヒソカさんの両手の間を行き来していたカードはあっという間になくなっている。
彼はカードを探すそぶりをし、ポケットから一枚のカードを取り出した。
「あぁ、あった、でも一枚じゃあ手品いはできないから...」
彼がその一枚のカードを持ち手首を降ると二枚に、もう一度降ると四枚になる。
各々のスートの1が揃っていた。
それだけでもすごいのだが、彼がそれを両手で挟み手を開くとカードの山がもとどおり。
「ヒソカさんすごいです！！」
「ふふっ、ありがとう。さて、この中から一枚の引いてくれるかい？」
「はい」
カードの山から一枚引いてまた戻す。
するとカードシャッフルし一番上を捲るが「おや？」と少し目を見開いた。
「ヒソカさん？」
「どうやらカードが逃げちゃったみたいだ」
「え？」
ヒソカさんは辺りを見回すようにしてから、私に目を止める。
「あぁ、そこにあったんだ」
彼は手を伸ばし私の首を掠めた。
そしてほんの少し髪をすくように触れ、そっと離れる。
「あっ」
離れた手には一枚のカード。
それは紛れもなく私の引いたカードだ。
「すごいですヒソカさん！」
「スペードの5か...君にはこっちの方がよさそうだ」
そう言われて渡されたのはハートのクイーン。
彼はなかなかに人たらしだ。
「それならヒソカさんはクラブのジャックですね」
「理由を聞いても？」
「最初はスペードのジャックと迷いましたが、会ったばかりの私を助けてくれたので印象的にはこっちの方が近い気がしたんです」
「君、もしかしてトランプの意味を知っていたのかい？」
「少しだけ、ですけど」
知ったかぶりに近い本当にわずかな知識程度。
しかし、「えらい、えらい」とヒソカさんが頭を撫でてくれたので正直嬉しい。
「それじゃあ、ハートのクイーンの意味はどうかな？」
「えっと、それが思い出せなくて。どんな意味でしたっけ？」
「...さぁ？」
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作者名：００ | 作成日時：2019年5月25日 12時
