始まりはEndRoleから (ページ2)

今日:3 hit、昨日:5 hit、合計:21,446 hit

Ep1「妖精王Oberon」ページ2

夏の夕日は時が止まったようにゆっくりと沈んでいった。
無駄な時間を過ごすほど体はだるさを増し眠気が襲う。
21時を過ぎた頃、寝るにはまだ早いけれど目蓋を閉じれば意識は自然と遠のいていった。
それから数時間が過ぎ0時を回った頃、はっと目が覚め起き上がる。
冷房をつけたままのせいかうっすらと肌寒さを感じた。

(喉乾いた...)

キッチンへと行きコップいっぱいに水を飲み干した。
それからリビングのクッションへ深く座る。
暗い部屋、月の光が淡く差していた。
天井をぼんやりと眺めながら昼間と同じことを考える。
今までのこと、これからのこと。
自由な学生の時間は終わり、楽しい夕暮れの放課後は過ぎた。

(...気持ちが悪い...)

何かが胸の奥で疼く。
その不快感を落ち着かせるように浅く息を吐き目蓋を下ろす。
これで全部終わってしまえばいいのに。
死にたいわけではない。
ただ急に意識がなくなってこの物語にピリオドが打たれてほしい、終幕願望とでも言うのだろうか。
終わってしまえ、そう強く、願った。

(っ！？)

突然部屋に明かりが灯り、驚いて目を開ける。

「え...」

「...キミは誰だい？」

赤い髪と、その隙間から覗く金色の瞳。

(????????????)

その容貌に目を惹かれたのも一瞬、状況が意味がわからない。

「人畜無害そうだけど、どうやってボクの家へ？」

「え？」

部屋のなかを見渡すと確かに私の家ではない。座っていたクッションは私の部屋にあるものと同じだが、部屋の様子はがらりと変わっている。

「え、え、え、えっと、えーと、え」

身に覚えはないけれどこれは不法侵入？
前科一般になってしまうのだろうか。
つまり内定取り消し、お先真っ暗...。

「ふふっ...そう青い顔しなくてもいいよ。あぁ、何か飲むかい？」

「っ...」

何か言わないといけないとわかってはいるが言葉が出てこない。

「ちょっと待ってて」

その男性はキッチンだと思われる方へ姿を消した。
早鐘のように脈打つ心臓を押さえ状況を冷静に分析する。
部屋においてある時計は午前7時、外もすっかり明るく日が照らしている。
自分の家のリビングにいたはずが、気がつくとここにいた。
これは、夢だ。
真夏の夜の夢の中。

「はい、お待たせ」

男性に渡された黒いマグカップ。
その中身を一口飲むと温かい優しい甘さが広がる。

「ホットミルク、落ち着くでしょ？」

さながらこの男性はオベロンと言ったところか。