始まりはEndRoleから (ページ1)

今日:1 hit、昨日:17 hit、合計:21,434 hit

Ep0「幕開けEndRole」ページ1

今年の夏は最初から暑かった。
地球温暖化もここまで来たかと他人事のようにぼんやり考えながら、節約のために切っていた冷房を付ける。
とある町のとあるアパートの一角。
自室で堕落することに飽き始めていた。
けしてニートではない。
学生最後の夏、22歳の今年、長い長い放課後が終わりかけていた。

「あっつ...」

何をするでもなく。
ただベットの上で天井を眺める。
無為に流れる時間に淡い心地よさと罪悪感が燻る。
やらなければならない事はない。
やった方がいい事があるだけだ。
この夏、ようやく手にいれた内定に喜んだのもつかの間、来年から仕事をするという実感は未だ湧かない。
するとスマホの画面に友人からの「明日暇か？」という一言が表示される。

「明日何があるのか先に言って欲しいものだね」

どうしてこう時間があるかどうかを聞くのか。
時間があると答えて面倒な何かが起こるのは嫌だ。
かといって時間はないと答えて面白い何かを逃すのはもったいない。
先に明日何があるかを教えてくれればもっと簡単なのに。
それでも、幼い頃からの友人だ。
もて余した時間に飽きていたところでもあり、「明日暇。出かける？」と返信する。

「ふぅ...」

画面をタップしただけで力を使いきったように腕を布団に沈めた。

「......」

部屋の外からセミの鳴き声が聞こえる。
車の走る音が聞こえる。
子供のはしゃぐ楽しそうな声が聞こえる。
ずっと子供のままでいるような気がしていた。
小学校、中学校、高校、大学と私の物語はもう終幕を迎えるように感じているのだ。

だからきっとこの日々の時間に意味はない。
これはただのエンドロール。