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クロロの言葉に心臓が凍った。
鋭い視線が私の反応を見るように向けられる。
乾く喉を鳴らしようやく声を発した。
「そ、そう、なんだ」
「なんだ、予想していたよりは冷静そうだな」
「全然冷静じゃないよ。ただ言葉が見つからないだけ」
ここでの暮らしが大変なのはわかった。
その中でクロロが生きるためにしたことを私の倫理観で非難するのはいけない気がするんだ。
「...でも私には盗みも誰かを殺すこともできないよ」
「潔癖性だな、ここでは生きづらいぞ」
「そんなことない」
「ほぅ？...おい、肩にゴキブリ止まってるぞ」
「そんな嘘、騙されないし」
「いや、マジだ」
こちらを指差され、肩に目を落とすと...。
「ごごごごごっっっ」
窓から入る灯りに反射する黒光りの背中。
揺れる触角。
これは、あれですね、
「ごきhdkそrっhfkvmcんsjskっっっ！？！？」
頭が真っ黒になる。
手で払いたいのに、触りたくないくてできない。
「落ち着け、今とってやるから」
半泣きになる私の手をクロロが掴む。
「あhっcっひdvjっこけfdんgf！！」
「何を言っているか全くわからない。それにもう取れた」
「...ほんとだ」
もう一度肩を見るとやつの姿はない。
「助かった〜」
緊張がとけ肩から力が抜け、大きく息を吐く。
あれは無理だ。
虫はあまりにも無理。
「大袈裟だな、この程度に」
「そりゃぁ、気持ち悪くない？」
「どうだろうな？慣れじゃないか？」
クロロは自分の拳に視線を落とす。
そして、私に見せるようにその拳を持ち上げた。
「数ヵ月したらこれにも慣れるさ」
「いや、慣れたくな、い...え、クロロさん、その手はもしや」
「ん、あぁ...」
持ち上げた手に力が入り、彼の拳から何かが潰れる音が聞こえる。
「...これで、もう大丈夫だろ？」
「ヒェッ」
爽やかに笑うクロロさん。
しかし、その指の隙間から流れ出る液体。
「せめてごきジェットとかで...」
「ごきジェット？」
「殺虫剤のこと」
「そうか...ふむ...」
「クロロ？」
「いや、今はいいか。それじゃあ今日はもう寝ろ」
クロロはドアへと向かう。
その背中なに焦りながら声をかけた。
「クロロ、今日はいろいろありがとう！おやすみなさい」
「ふっ、おやすみ」
クロロを見送ったあと、先程まで彼が座っていたところへ膝を抱えて座る。
不思議と不安はない
怖くもない。
ただ、漠然とした喪失感が心を占めていた。
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作者名：００ | 作成日時：2019年6月24日 13時
