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普通の女の子なら、恥ずかしくなってしまうようなセリフをせいかはまっすぐ夜陣の目を見て言い切った。

 苦笑する夜陣。

「負けん気の強い道具だな……。そこまで言うならお前がそいつのボイスを入手してこい」

「……うまく乗せられた気がするけど誰なの」

「同じ学年の『出蔵レーレ』だ」

「ああ……『寡黙の才女』って言われてる出蔵レーレさんね」

 せいかはノーデータの人物に心当たりがあったようだ。

 翌日登校してくる出蔵レーレを待ち構えていたせいか。

 いわゆるちんまりロリの容姿をしたレーレが早足で歩いてくる。

 せいかの足首には、包帯。

 これは実際に怪我しているからであるが、せいかはレーレとのすれ違いざまに捻挫が傷んでよろけたふりをしてバケツの水をレーレに思いっきりかけた。

 バッシャーン!

 しかもその水をせいかは氷を溶かしてキンキンに冷えさせていた。

 普通なら真夏でも凍えてしまうほどの衝撃。

 しかし叫び声一つあげないレーレにせいかは「ああ、そう……」とがっかりした。

「ごめんねっ、私ったらよろけちゃって。これ、使って!」

 適当にハンカチを渡しながら立ち去ろうとするせいかが、レーレから完全に背を向けた瞬間。

「てめえ、わざとだろ」

 あまりに低く自分の聴力で聞き取れる範囲の限界ギリギリの重低音をせいかの耳はキャッチした。

「重機音?!

いや、男の声……?!」

 周りを見渡すがそばにはうつむいたレーレしかいない。

 レーレの伏せた口が開く。

「わざとだよな包帯まで巻いて演技したみたいだが私はごまかされないぜ。認めるのか?
認めんのか?
その棒立ちだと認める気なさそうだな。
そりゃあ、そうだ。
誰だっていじめる悪意は隠したいもんだ。
ただ、いじめにタゲんなら相手が悪かったな。
人選ミスなのだぜ。
私の歯はハサミの刃みたいなもんで、口を開けば他人を傷つける。そう言われて育った。
だからわざとやった事実を認めないと知らん間にはさみの刃でお前の短いスカートの後ろズタボロに咲いてやるかもしれんのぜ?
おいおい何を放心してる……。
そんな権利ありゃしねーだろに。
あー、いじめられたのはこっちなのに何で私がドン引きされるんだよ……。
おかしいな。
おかしすぎるだろ。
だから今まで一切口を開かないで穏便にきたってのにみんなの平和、正義、真理ふっ飛ばした責任とれよっ!」

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設定タグ:青春 , 音楽 , オリジナル   
作品ジャンル:純文学, オリジナル作品
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作者名:ルスブ | 作者ホームページ:http://twitter.com/rusbsss  
作成日時:2022年9月9日 10時

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